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床版防水性能はGⅡ同等

NEXCO総研 舗装研 新たなグースアスファルト混合物(BLG)の基準まとめる

株式会社高速道路総合技術研究所
道路研究部 舗装研究室長

加藤 亮

公開日:2020.07.21

不陸には十分追従 
 耐久性をモニタリング

 ――既設床版についていえば、どうしても床版上の不陸という課題があります。それにどこまで対応できますか
 加藤 自己充填型の材料ですので、基層最低厚さの35mm以上の凹凸がない限りは施工できます。切削後の床版に傷があったりした場合でもアスファルトモルタル分がその傷に充填されますので、ミクロな不陸、マクロな不陸どちらにも追従します。
 ――NEXCO各社とも、本来GⅡが必要な大型車交通量の多い過密な路線で施工できず、GⅠを選択し、逆に負荷が少ない路線でGⅡを施工しているというジレンマがあります
 加藤 そうした箇所で、防水性能はGⅡ同等のものとしてBLGを展開していきたいと考えています。
 ――10年に一回やり直さなくてはいけないという話になると、厳しいと思います
 加藤 BLGはあくまでも「舗装」です。この「舗装」が床版防水機能を併せ持っているということです。ゆえに、舗装を補修すれば、必然的に床版防水機能も更新されることになります。
 BLGは「舗装」としては従来の橋梁レベリング層用アスファルト混合物(FB13)と同等の耐久性を有していますので、「舗装」としての補修サイクルはこれまでと変わりません。
 従来と変わらないサイクルで、従来と変わらない舗装補修工事によって、床版防水機能も更新されることになりますから、施工的には単純、かつ平易になります。
 ――実際はもっと長持ちするのではないですか
 加藤 実際は10年を超えて長持ちする現場はあります。20年を超えて持っている箇所もあります。舗装は路面性状測定調査を3年に1回行っています。なおかつパトロールカーによる点検をしており、異常が無ければ10年を超えても補修はしません。
 ――そのようなモニタリングをしていくということですね
 加藤 そうです。
 ――基層(橋梁レベリング層)上に乳剤による遮水層を設けてその上に表層を施工するという工法がありますよね
 加藤 POSMACですね。
 ――そうです。橋梁レベリング層のBLGが持っているのであれば表層だけを打ち換えるということも可能なのではないですか。また、それが可能であれば相当なコスト縮減効果につながると思います。その意味でも橋梁レベリング層の耐久性能についてモニタリングしてほしいと思います
 加藤 路面の状態は、わだちとひび割れとIRI(国際ラフネス指数:乗り心地を示す指標)でチェックします。これで異常が無ければ、舗装を剥がして補修するということはありません。仮にひび割れが発生していた場合でも、コア抜きしてみて表層の浅い部分しかひび割れが出ていなければ、表層のやり替えだけで済ませます。そうするとBLGに関しては10年を超えても触らずに済むことになると思います。

床版防水類の基準掲載を橋梁から舗装に移す
 コストは現状ではGⅡより少し割高

 ――床版防水類の基準の掲載を橋梁から舗装に移すようですね
 加藤 設計要領第二集から第一集に掲載場所を変更します。施工の場面を考えると舗装工事で施工する場合が多いので、それに従ったものです。合わせて施工管理要領や試験方法についても舗装へ所掌替えをします。


 床版防水を行う際の個別項目も下地処理工以降が舗装に移ります。橋梁が所掌する範囲は床版の断面修復工までとなります。但し、今後も橋梁・舗装間で研究情報は共有していきます。
 ――BLGの面積当たりコストはどのくらいになりますか
 加藤 まだスケールメリットが表れていないため、GⅡよりも少し高くなります。
 ――クッカー車も使うし、材料自体も高いでしょうからね
 加藤 スケールメリットが出れば価格も変わってくると思います。
 ――将来的にはどの程度にコストを抑えたいと考えていますか
 加藤 改良を加えることによりGⅡと同じ性能を担保させて、GⅡよりも安くしたいと考えています。橋梁レベリング層が床版防水としての機能を併せ持つということですので、床版防水の施工工程がなくなり、工期も短縮されます。さらに今後発生してきます防水工補修の際のメリットも有します。既存のGⅡは、未経験ではありますが補修の際に強固に張り付いている防水皮膜を取るのは非常に苦労するものと予想されます。しかしBLGは普通の切削で除去できます。また廃材のリサイクルも可能です。
 ――NEXCO西日本の御堂筋橋架替えにおいて鋼床版鈑桁の上に凍結抑制舗装(フル・ファンクション・ペーブ)を使うという事例が出てきました。今後、同橋のような合成桁の取替の際に(上部工重量を軽くするために)鋼床版を使う事例がNEXCOでも増えてくる可能性があり、そこに凍結抑制舗装を使う需要が増加する可能性がありますが、総研としては何らかの研究を行っていきますか
 加藤 テーマとして直ちには取り組むという予定はありません。複数の舗装会社が凍結抑制効果を謳った製品工法を有しており、まずはそうした舗装が使われていくことになると思います。
 ――高剛性舗装に関する取り組み状況は
 加藤 試験施工を行おうとしている箇所がいくつかある状況です。
 ――ありがとうございました
(2020年7月21日掲載)

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