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インタビュー詳細

大規模更新が全体の半分弱まで伸長

PC建協 大野新会長インタビュー「3つの挑戦を着実に推進」

プレストレスト・コンクリート建設業協会
会長
大野 達也 氏

 プレストレスト・コンクリート建設業協会(PC建協)の新会長にオリエンタル白石社長の大野達也氏が就任した。大野新会長は幹事長として「新ビジョン2017」をまとめたこともあり、そのビジョン達成には並々ならぬ意気込みを有する。大規模更新を中心とする補修補強事業の展開や、生産性向上、働き方改革などをどのように進めていくか、などについてインタビューした。(井手迫瑞樹)


i-Bridgeを推進 プレキャスト化の推進に努める

 週休2日制の確保など働き方改革も進める 

 ――新会長就任の抱負は

 大野会長 新ビジョン2017の策定にあたっては幹事長の立場で参画しており、熱い思い入れがあります。策定から3年が経過して、本格的に実現に向かっていく段階になっており、ビジョンの実現に向けて使命感をもって主導していきたいと考えています。ビジョンの第1章で、PC事業の功績、PC構造物の特長や魅力に関して高らかに謳いあげた後、PC事業に求められる社会的要請と果たすべき責務について記述しています。社会的要請と果たすべき責務について3つの挑戦を挙げており、一つ目がインフラ整備更新への挑戦、二つ目が生産性向上への挑戦、三つ目が魅力的建設産業への挑戦となっています。

 「インフラ整備更新への挑戦」は、ミッシングリンクの解消、国土強靭化、インフラ老朽化対策、大規模更新などのさまざまなプロジェクト、建築や海外への対応など、PC事業につきつけられた課題とその解決策について示しています。PC構造物の持つ高い強度や耐久性の利点を生かして、インフラの整備更新に大いなる貢献ができると考えています。

 「生産性向上への挑戦」は、プレキャスト技術とICTの活用を二本柱としたi-Bridgeという協会独自の生産性向上施策を掲げて、とくにPCを用いたプレキャスト構造は生産性と耐久性の向上を同時に実現できるインフラの整備上、極めて有効な工法であるので、発注者、設計者にその採用の拡大を積極的に働きかけていきたいと考えています。

 「魅力的建設産業への挑戦」は、PC業界だけでなく建設業全体がもつ喫緊の課題です。週休2日の実現、工事の安全性確保、将来にわたる担い手の確保、女性技術者に活躍してもらう環境づくり、技能労働者の処遇改善やモチベーションの向上――そのための建設キャリアアップシステムの推進など、協会の本部、支部、各委員会、各部会、さらには姉妹協会でもあるPC工事業協会と連携して、着実に取り組みを進めていきたいと考えています。

 この3つの挑戦に挑んで結果を残していくためにも、協会が定める4つの活動方針――①市場対話②技術支援③生産支援④社会への働きかけ――をもって、しっかりと支援と基盤づくりをしていきます。結果を残すことで次世代に確かな技術を伝えることができると考えています。その時に初めてPC事業がサステナブル足りえます。

 現在は3つの挑戦とも、想定通りに進めることができており、特に「魅力的建設産業への挑戦」については、ビジョン当時よりも時代が先を走っていることもあり、想定以上の進展を見せていると考えています。


受注総額は5期連続3,000億円超と堅調に推移

 今期の発注高は3,701億円を予想

 ――3つの挑戦を進めていく中で、事業環境において先が見通せない状況にあると思うが、現状の事業環境についてどのように認識しているか

 大野 新型コロナウイルス感染症で経済を含むあらゆる活動が、リーマンショックを超える大きな影響を受けています。一方、昨年は台風19号で大きな自然災害が発生するなど、ここのところ毎年のように自然災害が発生して、日本各地の広い範囲に甚大な被害を蒙らせています。我々の国土は地震やゲリラ豪雨など、自然の驚異に常にさらされていることを自覚しなければなりません。国土強靭化、災害復興、経済活性――そのためのインフラ整備は、コロナウイルスの影響を受けるなかでも着実に進めていくことが重要であり、しっかり対応していくことが建設業の責務です。

 コロナウイルスの影響について申し上げますと、PC専業12社に聞いた結果、工事に影響があったのは4件と現状では影響は軽微です。内訳は発注者からの規制を伴う床版取替工事の延期要請、県境を越えて下請業者を入れないようにして欲しいという首長からの指示、元請の自主的な工事中断などです。

 発注の遅れも現段階では見受けられません。

 さて、昨年度の会員受注総額は3,209億円と一昨年度より276億円減少しました。補修・補強部門が対前年度126%と増加したのに対して、新設部門が同81%と減少したことによるものです。全体で対前年度比92%となりましたが、5期連続3,000億円を超える受注は達成しました。受注量が低迷した時期のことを考えると、安定的な受注量となりつつあります。

(PC建協提供資料より抜粋)

 さらに、今年度の発注高は3,701億円を予測しています。昨年度同時期の予測を上回る数字であり、NEXCOの大規模更新工事の発注が大幅に増加することが寄与するものと思われます。一方で国土交通省および自治体の発注は減少、鉄道会社は微減と予想しています。工事種別では、新設分野は前年度並み、補修・補強分野はNEXCO3社の大規模更新事業だけで2,151億円となり、それ以外を加えると2,331億円程度の発注量を予想しています。補修・補強分野は全体の発注見通しの6割を超えることになります。現段階では、新型コロナウイルスの影響を加味していませんが、その影響で、発注時期のズレや発注件数の減少、発注形態の変更(大ロット化、指名競争入札など)が起こりうる可能性もあります。



補修・補強が全体の6割を占める その8割が大規模更新

 設計部門の強化 時期や工期を考慮した発注を希望

 ――新設の減少を補修・補強でカバーしていますね

 大野 ここ数年はほぼ右肩上がりと言っていい傾向です。今年度はコロナウイルスの影響を考慮しなければなりませんが、それでも増加傾向です。新設が減って、補修・補強がカバーしているというよりも、新設の受注に年度ごとアップダウンがある中、補修・補強が純増しているという見方が正しいと思います。

 ――補修・補強が全体の受注量の6割を占めるまでに至っていますが、その課題とメリットについて答えてください

 大野 仰る通り補修・補強がPC全体の6割を占めており、さらにその主力である床版取替を伴う大規模更新事業がその8割を占めます。つまり半分弱が大規模更新事業というわけです。これに対応していくには設計をどうこなしていくか? という課題がまずあります。以前はNEXCOなどの新設で詳細設計に携わる機会がたくさんあったので、各社ともそれをこなすために設計部門に技術者を多く配置していました。しかし新設による設計機会の減少から、各社とも設計部門を整理し、工事部門に多くの人を転換させました。PCの技術者は設計と現場の両方を経験しながら技術を磨いてきたわけですが、昨今は工事現場しか経験したことのない技術者もたくさんいます。その状況下で設計や照査を多く必要とする大規模更新事業が急激に増加してきました。あらためて設計部門を強化しなければなりませんが、すでに各社とも対応し始めている状況であると考えます。


様々な場所で大規模更新事業が動いている(弊サイト既掲載写真より抜粋)

 もう1つは工場の問題です。昨年度、会員企業の持つ全体のプレキャストPC部材製造能力80万m3に対して需要は55万m3でした。加えて会員企業の中には工場関係で設備投資をするという動きが今後もありえると推察します。一見、製造能力には余力があり供給に問題がないように見えますが、問題は(特に大規模更新工事で)繁忙期が重なり、工場の供給能力に対して期間的にタイトになる可能性があるということです。発注者に、計画的な発注とその情報開示、難しいかもしれませんが可能な範囲での、工事の平準化や余裕期間、フレックス方式の採用、さらには現地にプレキャストをストックできるヤードを計画していただくなど、ご検討いただかなければならない局面がくるかもしれません。


新設分野で培った技術が補修・補強分野に生きている

 技術を維持するためにも安定した新設橋梁の発注が必要

 ――大規模更新に対応するため技術者はどのように確保していくのか

 大野 既設橋の診断や補強設計する技術が必要ですが、そこでは新設分野の中で培った構造や材料、施工方法に関する知見や技術が活かされています。新設がずっと減っていくという状況が生じると、そうした知見や技術が養われないまま、補修・補強分野に携わる技術者が増えていきます。

 補修・補強工事は、すでに出来上がった橋梁の補修や床版の更新、桁の架替を行うわけで、新設より高い難易度を要求されます。場数が増えることで現場対応力は向上していくと思いますが、新設工事の経験のない技術者が既設橋を扱うケースが増えると、少し心配な面もあります。新設橋梁を設計・施工した経験を持つ技術者、構造にも材料にも工法にも精通した技術者を多く持つ、PC建協会員企業の強みが喪失していかないか? そこが少し心配です。

 ――部分最適、全体不適の罠ですね

 大野 PC建協会員企業の持つ技術力を維持するためには大規模更新等の補修・補強工事だけでなく、新設橋梁もバランスよく発注していただくことが必要だと考えていますし、そうなれば会員企業は将来にわたってインフラ整備や国土強靭化に大いに活躍してくれるものと確信しております。