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インタビュー詳細

主戦場となる保全分野の工事を積極的に受注

ピーエス三菱 森拓也新社長インタビュー

株式会社ピーエス三菱
代表取締役社長
森 拓也 氏

 ピーエス三菱の新社長に、前代表取締役副社長の森拓也氏が就任した。PC橋における市場が新設から更新・保全へとシフトしていく中で、日本のPC技術のリーディングカンパニーとして目指すべき方向性を詳しく聞いた。


櫃石島高架橋工事で技術と現場マネジメントを学ぶ

 機会を与えて自分で考え行動できるようにするのが教育

 ――京都大学工学部を卒業されて、ピーエス三菱の前身であるピー・エス・コンクリートに入社されています。大学での専攻と入社の経緯からお願いします

 森社長 京都大学工学部は入学後に土木学科と交通土木学科にわかれますが、カリキュラムは一緒です。私は交通土木学科に在籍しましたが、交通関係を学んだわけではなく、河川水工学の研究室に入りました。コンクリートを専門にしていたわけではないので、就職にあたってはある電鉄会社を志望しました。しかし、たぶん成績で落とされて、就職担当教授の紹介で当社に入社しました。PCのことは入社してから初めて勉強しています。

 ――入社後の経歴と印象に残る業務や現場は

  入社後の約15年間は大阪支店勤務で、そのうちの大半は設計部署に在籍し、一部現場も担当しました。その後、本社に異動しています。

 印象深かった仕事は、瀬戸大橋の一部をなす櫃石島高架橋PC上部工工事です。ピー・エス・コンクリートが筆頭会社の4社JVで受注しましたが、ダブルデッキ構造の道路鉄道併用橋で非常に規模が大きく、かつ難易度の高い工事でした。30歳前後の3年間で、設計を1年間行って、その後現場の施工管理を竣工までの2年間担当しました。

 入社して7、8年が経過して一人前になったような気がしていましたが、難易度の高い仕事に携わり、自分がいかに未熟であるかに気づかされました。



櫃石島高架橋


 ――具体的にはどのようなことですか

  設計のことで言えば、ダブルデッキ構造ですから地震に対する抵抗の仕方がこれまで自分が担当してきた単純桁とは根本的に違います。立体的に横梁のなかを桁が貫通するような構造ですので、ねじりモーメントが発生します。当時、コンクリート構造物のねじりモーメントに対することは教科書的にはほとんど書かれていませんでしたが、それに対処しないと実際の設計ができないわけです。最先端の研究を知らないなど、自分の知識が貧弱なことを実感しました。最終的には構造力学などを猛勉強して、設計を完了させました。

 施工管理でも、例えば今でいう設計変更などの発注者とのさまざまな交渉事を担当しました。ただモノをつくるだけでなく、お互いが納得いくような形まで協議するという現場のマネジメントを経験できたことが非常に勉強になりました。

 また、4社JVですので同じ30代前後の若いエンジニアが各社から来ていました。プレストレストコンクリートに携わる他社の若手エンジニアと一緒に働くことで刺激を受け、その後もいろいろと助けてもらったりして、貴重なネットワークをつくることができました。そのような意味でも非常に中身の濃い3年間でした。

 ――影響を受けた上司はいますか

  そのときの直接の上司で工務主任をされていた小林勤一さんです。設計変更をはじめ発注者とのさまざまな交渉事を、とやかく言わずに経験のない私に任せてくれました。小林さんの仕事のやり方を横で見ることができたこともいい経験になっています。

 ――そこから学んだことは

  小林さんからの影響だけではないかもしれませんが、手取り足取り教えることが教育ではないと考えています。やる気のある人間には機会を与えますが、細かいことまですべて指図をせず自由にやらせないと、自分で考えなくなります。上司の指示を待つだけならば、極端なことを言えば派遣社員でもいいし、もっと言えばAIでもいずれよくなるでしょう。

 任せて自分で考えて行動できるようにすることが、本来の教育であると思います。



新東名高速道路 厚木第四高架橋


新名神高速道路 鈴鹿高架橋


安心して働くことができ、誇り・やりがいが得られる会社を目指す

 新しい技術にも真摯に取り組む

 ――社長としての抱負をお聞かせください

  約10年前の建設業界の経営環境が非常に厳しいときにリストラを行っています。この5年間くらいは経営環境がよくて、社員の待遇改善もある程度はできたと思います。

 経営が厳しい時は、社員が不安を持ちながら働いているという状態だったと思いますが、それでは本人の能力やパフォーマンスを十分に発揮できません。

 経営環境が厳しい時でもきちんと収益が上げられて、社員が安心して働ける会社――これは最低条件なので、そのような会社にしてきたいと思っています。また、社員がいきいきと働くためには、自分の仕事に誇りを持ち、やりがいを感じられる会社でなければなりません。安心と誇りとやりがいが得られるような会社を目指し、それができれば会社の業績も必ずいい方向にいくと思っています。

 ――そのような会社にするために具体的に考えていることはありますか

  経営環境も我々がつくるものも時代とともにどんどん変わっていきます。土木事業では、プレストレストコンクリートは新設の橋梁を中心に普及してきた業種ですが、現在はメンテナンス分野に軸足が移ろうとしています。そのようなことにうまく対応できる会社にしていかないと、安心して働ける会社にはならないと思います。時代が移り変わるなかで、新しい技術に真摯に取り組んでいくことが、技術者にとってもやりがいにつながると考えています。