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インタビュー詳細

桁遊間部止水材『ライトレックス』を軸に約7億円の売上げ目指す

旭化工 片島大志新社長インタビュー

旭化工株式会社
代表取締役社長
片島 大志 氏

 旭化工は、道路橋の桁遊間止水分野に特化した素材、製品を開発し、上市しているメーカーである。山内寛会長(前社長)の豊富な技術的知識と強く個性的なリーダーシップのもと、13年前に生まれ変わり、伸縮装置メーカーへの革新的な止水材の提供や、伸縮装置のすべり止め工法の共同開発(ノンスリップ工法)、東日本高速道路と開発した小遊間止水工法などを展開している。今回は山内会長に指名され、同社の開発責任者から新社長に就任した片山大志社長に抱負と具体的な指針を聞いた。(井手迫瑞樹)

 

リーマンショック中の就職氷河期に研究職として入社

 様々な素材をふんだんに使っての実験に楽しさ

 ――入社されたのは

 片島社長 2007年の入社で、現在13年目です。

 ――元々化学系の出身だったのですか

 片島 実は近畿大学の物理学科出身です。解析による地震予知研究をしていました。

 ――卒業後は、直で入社されたのですか

 片島 新聞記者を志望して勉強していましたが、当時は狭き門で……。何をしようか? と探していたところ、研究開発の職種を募集していた当社に行き着きました。当時はリーマンショック中の就職氷河期で研究開発職の募集は稀でしたが、自宅から近いこともあり、就職しました。

 ――当時、どのような研究を募集していたのですか

 片島 前のオーナーから山内前社長(現会長)が会社を買い取ったばかりで、橋梁で一番損傷が多い桁遊間向けの止水用品を研究開発して様々な商品を世に出したいと山内社長が志していた時にタイミングよく入社しました。大手の下請として甘んじるのではなく、自分で開発して、自分で値段を付けて、自分で納期を決められるような『メーカー』になりたいという思いがありました。そうした思いがあったため、氷河期でありましたが、将来を任せることのできる技術者を募集しました。その時に応募し、幸いにも入社することができました。

 入社して最初に携わったのは(伸縮装置の)すべり止め材の開発です。その半年後には小遊間止水工に着手しました。
 
桁遊間止水工法の設置状況①

桁遊間止水工法の設置状況②


小遊間止水工法の施工イメージ

 ――いずれも現在では御社の柱となる製品・工法ですね

 片島 そうですね。開発は、様々な樹脂などを反応させるところから、まさに一から行いました。こういう実験は好きであったこともあり、楽しく仕事ができました。元々物理だったので、実物に触るという事が少なかったのですが、この会社に入って、実際に主剤および硬化剤と見做すものを混ぜて、予想したものができるか? 比率を変えたらどうなるか? など組み立てた理論的想定と実際を比較する工程が楽しかったですね。他の企業ではこうした実験を自社で行うことは少ないようです。

 特にウレタンの発泡樹脂などは、他所に全くないものを作り出すということで、入社して半年ほどでその開発に携わり始めたわけですが、いわば素人だったため製品開発の難しさというものは認識しておらず、気楽に業務に携わることができました。後で考えると当社の規模で何種類もの素材をたくさん用いて実験をさせてもらうことが(費用的なことを鑑みても)かなり異色であることが分かりました。今では非常に有難いと持っておりますし、こうしたことは今後も続けていきたいと考えています。


39歳での社長就任 

 ――こうした主力商材の開発に携わったわけですが、社長になる直前はどういう立場だったのですか

 片島 開発の総責任者でした。

 ――社長職を打診されたのはいつですか

 片島 正確には社長に就任する1年ほど前です。

 ――現在のご年齢は

 片島 39歳です。

 ――社長としては相当に若い部類に入ると思うのですが、打診されたときにはどう感じましたか

 片島 会長は3年ぐらい前から、従業員の中から次期社長を選ぶから心しておくようにと言われていました。世代交代を進めたいということで、若い従業員の中でも最も若い幹部職員である私に白羽の矢を立ててくれました。その際には、私のリーダーシップが発揮できるよう世代交代を進め、環境を整理していただきました。

 ――中小企業で利益を大きく出している会社でも後継者難で買収されることもある中、後継者に恵まれたことは御社にとって良かったと思います。ただ、旭化工は山内会長のリーダーシップと商品開発能力に多くを拠っていることは否定できないと思います。新社長として次代をどのように舵取りしていきますか

 片島 会社の理念(「企業としての社会性を身に付け、社会(人)に役立ち、社会(人)に喜ばれる企業を目指します」)、や商品開発を重んじてメーカー化を目指すという方針そのものは引き継ぎます。それを更に発展させていきたいと考えています。商品開発は、主に公共事業に提供されており、遊間部などの止水分野において今までできなかったことに挑戦して止水材を造っていくことについて、今後もさらに強化していきたいと考えています。


ライトレックス』の大幅な適用拡大を目指す

 止水効果はもちろん、高い柔軟性を有し、はがれにくい

 ――これから伸ばしていきたい分野は

 片島 基本的にはお客様のニーズに対する素材的な提案が基本です。現在は『AF-0080』という連続気泡体で止水のできる素材を用いた、連続気泡フォーム止水材『ライトレックス』の適用拡大を図っています。

 『AF-0080』は、従来では不可能だった高い連続気泡率(75%以上)を保持するフォームでありながら、止水性があるという特徴を有しています。このフォーム材は①フォームセルが微細である、②フォームセル同士が弁体膜で連続貫通している、③フォーム自体に撥水性があるという特徴を有しています。そのため、外力によって潰されたフォームが復元する際に水を吸い込むよりも空気を吸い込むことが容易であり、伸縮装置が激しく挙動する箇所でも高い柔軟性を発揮し、止水能力を発揮します。言うなれば『AF-0080』は、せん断・圧縮・引張が同時に懸かる3次元の挙動にも対応しつつ接着力を落として外れることなく止水ができます。こんな止水材は当社の『ライトレックス』以外にありません。

AF0080(左)とウレタンフォームの違い(右)

AF0080の製品規格

溜水伸縮試験/耐水圧試験

フォームセルは大気しか通さない

 例えば、簡易鋼製ジョイントにおいては、シール材などを流し込み補修していましたが、『ライトレックス』は、成型品を(蛇腹状の)複雑な形状を有する箇所でもフィットさせ、接着剤でくっつけるだけで手軽に施工することができます。また、高いエネルギー吸収力を誇ることから、今後は防振、減衰機構などの用途にも、展開を図っていきたいと考えています。

ライトレックスSの設置例①

ライトレックスSの設置例②

ライトレックスSの設置例③


ライトレックスSの製品規格

 ――コスト的な側面は

 片島 今までの乾式止水材とほぼ同様の材工コストで提供できます。

 ――新規開発している分野は

 片島 やはりメンテナンス分野です。点検や長寿命化のための補修が簡単にできる製品の開発に努めています。とりわけ添接部や溶接部の点検は手間がかかり、防錆も難しい箇所です。そこに目を付けました。

 ――透明のボルトキャップのようなものは、今でもありますが、御社の独自性は

 片島 道路における高力ボルトは錆も生じますが、振動による緩みも生じます。特に支承ボルトにおいては顕著です。しかし、そうした緩みはシールをしてしまうと見えません。これを点検しやすく、錆や緩みも生じにくくする素材はないか試行錯誤しています。

 ――今後の体制について

 片島 会長の配慮もあり、役員体制は私と±10歳ぐらいの年代で固めて、業務に当たっています。従業員数は21人で、平均年齢は43歳です。30代の層が厚くなっています。

 ――現在の年間売上は

 片島 約5億3千万円です。

 ――3年後の目標は

 片島 7億円超には持っていきたいですね。若い人が多いためその育成を図りながら目標を達成したいと考えています。若い人材の技術指導は、山内会長が積極的に行ってくれるのでありがたく感じています。しかし山内も77歳と高齢ですから、彼がいなくなった後に、急に技術が落ちたといわれないよう、今のうちに基盤を作っておかねばいけません。

 ――ありがとうございました
(2020年3月12日掲載)