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インタビュー詳細

スーパーホゼン式工法を核に他技術と連携できる協会に

日本建設保全協会 牧角龍憲会長インタビュー

一般社団法人
日本建設保全協会
会長
牧角 龍憲 氏

 RC構造床版の下面増厚工法「スーパーホゼン式工法」を展開している日本建設保全協会は昨年5月に開催された総会で、牧角龍憲氏(九州共立大学名誉教授)を会長に選出した。同工法の特徴や協会が目指す方向性などについて、牧角会長に聞いた。

ホゼン式工法との出会いは約25年前
 輪荷重走行試験では新規床版とほぼ同様の挙動を示す

 ――会長就任の経緯からお願いします
 牧角会長 大学でコンクリート工学を専門にしていて、そのなかで橋梁の補修や維持管理にも携わっていました。約25年前に、国土交通省のある工事事務所の課長から熱心にいい工法に取り組んでいる小さな会社があるので、応援してほしいという話がありました。それが、スーパーホゼン式工法の前身であるホゼン式工法との出会いです。
 ――その小さな会社は
 牧角 福岡にある橋梁保繕という会社です。1993年の25t対応で床版厚を厚くしなければならなくなったときに、下面増厚工法であるホゼン式工法が多く採用されて、売り上げも上がりましたが、事業を拡大しすぎて黒字倒産してしまいました。
 橋梁保全と一緒に取り組んでいた山下鐵洋前会長がホゼン式工法を引き取り、私の研究室との共同で開発したのが、スーパーホゼン式工法です。
 同工法は、①損傷が生じた床版の引張力や剪断力が作用する面に、テーパ付きT型アンカーで補強網鉄筋に緊張力を与えて圧着固定、②接着力の高いポリマーセメントモルタルを塗り込むことで、圧着固定した鉄筋と既設床版を接着、③超低粘度エポキシ樹脂を補強部材の中にある微細空隙(鉄筋と既設床版の隙間や既存するひび割れ等)に注入を行うことで、既設床版と補強材を一体化して、疲労耐久性に優れた高い補強効果を実現するものです。



スーパーホゼン式工法の施工フロー


主な施工状況① (左)網鉄筋緊張圧着状況/(右)ポリマーセメントモルタル吹付


主な施工手順② (左)超低粘度エポキシ樹脂注入/(右)完成


 ――具体的にどのような“応援”をしていたのでしょうか
 牧角 床版補強工事後に、自前で実橋載荷試験を行ったり、歪みデータを取ったりしていましたが、公表をしていませんでした。そこで、学会などに論文を出して、ホゼン式工法のアピールをしたのです。
 1999年には建設省土木研究所と民間企業との共同研究にスーパーホゼン式工法も参画しました。床版の輪荷重走行試験における疲労耐久性評価手法の開発に関する共同研究で、スーパーホゼン式工法(試験床版は床版厚19cmを補強したもの)は荷重22t、走行回数16万回まで新規床版(床版厚25cm)とほぼ同様の挙動を示し、他工法よりも大きな載荷重ならびに走行回数まで耐荷力を有していることが確認されました。また、破壊後の試験体の状況から、床版破壊に至るまで下面増厚材が既設床版と一体化していることも確認しています。



建設省土木研究所での輪荷重走行試験結果


破壊後の状況


 話は前後しますが、1995年に阪神・淡路大震災が発生して、床版補強よりも耐震補強が優先されることになりました。既設構造物の耐震補強では炭素繊維巻き立てが有効となり、その流れで床版補強でも炭素繊維シート貼り付けが簡便であることから採用件数が増え、下面増厚工法にとっては厳しい状況が続きました。それでも、メンテナンスの時代になり、スーパーホゼン式工法も重要になるという山下前会長の強い信念に賛同して、地道ながらも継続して一緒に研究を進めてきました。
 1999年に設立された本協会も20年が経って下地ができたことから、新たな形の協会を目指して会長に就かせていただきました。
 ――下面増厚工法はスーパーホゼン式工法だけではありません。奈良建設や前田工繊、耐震補強にも使える住友大阪セメントのものなどがあります。そのなかで、なぜ先生はスーパーホゼン式工法を薦めるのでしょうか
 牧角 一番大きいのは、工法自体を地場の企業の方が工夫されてつくられたことです。とくに、網鉄筋を止めるためのアンカーピンにテーパをつけて、それを打ち込めば供用中の振動があるなかでも圧着固定できることは理屈にかなっています。
 先にお話しした建設省土木研究所との共同研究でもいい結果が出ていますし、大学でも定点の疲労試験を行いながら、樹脂を入れたらどのように広まっていくかという樹脂注入の実験を行いました。そこでも低粘度エポキシ樹脂がきちんと流れるのが実証されました。これらのことから間違いのない技術と考えました。
 ――建設省土木研究所との共同研究では水張り試験は行ったのですか
 牧角 行っていません。当時は床版に水が入ることによって損傷するという論文が発表されたころでした。
 ――今後、水張り試験は行わないのですか
 牧角 協会としても実証が必要ですから、行っていきたいと思います。

施工橋梁のうち、点検結果で判定区分Iは約34%
 20年以上経過しても再劣化していないことが重要


 ――会長としての抱負と目指すべき協会の方向性を教えてください
 牧角 私はこれまで官公庁や学会でさまざまな委員会の委員長や委員を務めてきました。そこで培ったネットワークや知見を活かして、スーパーホゼン式工法だけでなく、ほかの優れた工法も会員に伝えていき、橋梁の損傷状況に応じた補修・補強を広く協会で受注、施工していくような体制をとっていきたいと考えています。
 ――スーパーホゼン式工法にはこだわらないということですか
 牧角 同工法は協会の核ですし、非常に優れたものですから、そこは強力に進めていきます。ただ、協会には同じ思いを持った優れた会社が加盟しています。規模はそれほど大きくない会社が多いので、全国に仲間がいることで安心できますし、会員のオーナーの方々も他県で頑張っている会社があると認識できます。そのなかで、新しい取り組みも行って切磋琢磨できるようになればいいと思います。
 ――昨年度で橋梁定期点検が一巡しました。スーパーホゼン式工法で施工した橋梁がどのような点検結果になっていたか把握されていますか
 牧角 スーパーホゼン式工法は疲労耐久性に優れることを特徴としていますが、それは10、20年経過しないとわかりません。NETISはVR登録ですが、NETISでもVRは施工時に良し悪しが分かる技術ではなく、継続調査の対象技術で年数が経過しないと分からないものとなっています。継続調査をする必要はありましたが、これまでデータがありませんでした。
 スーパーホゼン式工法(ホゼン式も含む)の施工実績は315橋(2019年4月現在)で、橋梁名と工事名が一致せずに不明となっているものを除いた228橋の点検結果は把握しています。内訳は、判定区分Ⅰが77橋(約34%)、Ⅱが94橋(約41%)、Ⅲが57橋(約25%)でした。Ⅰの橋梁のうち、施工後20年以上経過した橋梁は45橋となっていました。ⅡとⅢもありますが、それは施工した床版だけでなく、さまざまな部位の損傷も関係していると思われます。Ⅰが歴然とあり、20年以上経過しても再劣化していないことは、協会としても誇れることだと考えています。



施工橋梁の点検結果


 ――Ⅱ、Ⅲの橋梁でも、点検では部位別に分けていますよね
 牧角 道路メンテナンス年報では、橋梁全体の健全度しか出ていません。部位別の詳細は各事務所に聞かなければなりませんが、まだ調べていません。また、部位別でも床版全体をスーパーホゼン式工法で補強したところはいいのですが、一部のところもあります。そこをどのように調べるかはまだ考えていません。
 ――会員が現場で目視してもいいですよね
 牧角 次回の総会までに検討して、自分たちが施工したところがどのようになっているか、写真を撮るなどの会員の協力は得ていこうと思っています。ただ、会員は橋梁補修だけでなく舗装やのり面などのさまざまな工事をしています。さらに、床版を目視するとなると現場環境で難しいところもあります。
 ――20年前の橋梁はどのような損傷だったのでしょうか
 牧角 当時は25t対応で、19cmの床版厚を増厚するものが大多数でした。その後に塩害や水などの影響による補修・補強が出てきています。
 ――具体的な施工橋梁を教えてください
 牧角 施工橋梁は福岡をはじめ九州が多くなっています。
 福岡市内の御笠川を渡河する国道202号の緑橋では、1996年に25t対応でホゼン式工法により床版補強を行いました。



緑橋全景


緑橋施工状況


 同橋は御笠川の河川改修(拡幅)にともない、2001年に架け替えることになりましたが、架け替え前に福岡国道事務所に申し出て、実橋での載荷試験や非破壊試験を行いました。解体した桁(床版)の断面を観察した結果、既設コンクリートと補強増厚部が空隙なく一体化していることが確認されています。幹線道として交通量が多い国道橋での床版補強として、スーパーホゼン式工法が有効であることが実証されました。


解体桁(床版)の断面とその拡大状況(右)