道路構造物ジャーナルNET

橋梁耐震や大鳴門橋の作業車改造なども着々と進む

2020年新春インタビュー 本四高速鳴門 塩害、鋼床版疲労など様々な対策必要

本州四国連絡高速道路株式会社
鳴門管理センター
所長

磯江 浩 氏

公開日:2020.01.01

志知高架橋 落橋防止構造の設置が進む 
支承構造を設計照査 中間橋脚は堤体内補強を回避

 ――志知高架橋については
 磯江 志知高架橋は複数の橋梁が連続している高架橋で、鋼箱桁の新川橋ではパネル式足場(セーフティSKパネル)を設置して、桁補強や落橋防止、変位制限の工事に着手しています。足場は先の台風10号の強風でも被害はありませんでした。
 下部工は未着手なので、今後、RC巻き立てを行っていきます。
 平池橋は池に架かる橋梁で、水を使用しない時期しか施工できないので、秋から水を抜いて、RC巻き立て及び変位制限構造を施工していきます。


池に架かる平池橋

 ――足場は台風でも被害がなかったとのことですが、以前、沖縄のNEXCOの橋梁では網状にして風荷重を受けない構造にしていましたが、そのような工夫をしていたのですか
 磯江 対策はしていませんでした。内陸部なので、風速は20m/s以下だったと思います。
 ――補強内容と進捗状況は
 磯江 落橋防止でPCケーブルを設置するので、橋脚側のアンカーを打っています。上部工側のブラケットのためのアンカー定着(約380本)は完了しています。また、支承取替のためのアンカー定着に着手します。
 橋脚のRC巻立ては、関係機関協議完了後に着手する予定です。
 ――RC巻立てのみですか。炭素繊維での補強は
 磯江 本工事ではRC巻立てのみです。耐震補強が完了したところでは、ポリマーセメントで巻立てた橋梁もあります。建築限界の関係で、通常の25cmで施工すると側道や歩道に影響するので、70mmに抑えるためにそのようにした事例はあります。
 ――今後の予定は
 磯江 2件の工事の契約手続き中です。1件は8月29日に開札して、大林組が落札しました。工事名は、鳴門管内橋梁耐震補強工事(その1)で、津名一宮ICから緑PA付近に位置する橋梁となります。26%以上が7橋、26%未満が2橋です。落札価格は、22億5,000万円(税抜き)です。

架け違い部補強は予定なし
大池橋は池の水を抜く6カ月で橋脚を補強する必要

 ――本四の管理橋梁で架け違い橋梁はありますか
 磯江 あります。
 ――NEXCO西日本・大分道の並柳橋では熊本地震時に桁衝突で桁ずれが発生しました。NEXCOでは、架け違い部で衝突が起きないように耐震補強で工夫をしていますが、本四では
 磯江 架け違い橋梁については、全体系の動的解析のなかで照査して、衝突しないという確認が取れたので、対策は行っていません。支承が壊れないよう変位制限装置を取り付けています。
 ――2件目は
 磯江 9月19日に開札した(その2)で、緑PA付近から淡路島南ICに位置する橋梁が対象です。大林組が23億9500万円(税抜き)で落札しました。26%以上が10橋、26%未満が1橋となります。(その1)よりも規模が大きな工事になります。
 両工事とも2021年度末までに完了予定ですが、池の中にある橋脚も多く、例えば(その1)の大池橋には池のなかに橋脚が12基あり、水をすべて抜く6カ月間で完了しなければならないので大変です。


大池橋

 ――ため池内ですから(RC巻立てより)アラミドシート補強のほうがいいのでは
 磯江 フーチング上面から補強をしなければならないので、水を抜く必要があり、ドライな状態ならRC巻立ての方が安価です。
 ――技術的な面というよりも施工計画的な面で難しいですね
 磯江 掘削をして足場を組み立てて、表面処理や型枠・鉄筋組み立て、コンクリート打設等を6カ月間ですべて行わなければなりません。
 ――プレキャスト化はできないのですか。埋め殺し型枠みたいなものをRC巻立てに応用できないのですかね
 磯江 水を抜いた時に、止水のライナープレートだけはめておけば、水が溜まっても中はドライになるということも部内で話し合っています。

門崎高架橋で鋼床版に疲労亀裂
鋼箱桁の張出部に輪荷重が載荷する構造的要因か

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の過去3年の実績と施工予定を教えてください
 磯江 主なものでは、大鳴門橋では、補修塗装、ケーブル類補修(ケーブルバンドシール補修、ハンガーロープ定着部補修など、下図・写真)を継続して行っています。門崎高架橋では、鋼床版疲労き裂補修を実施しています。現在、大鳴門橋の鋼床版疲労き裂を調査していますが、亀裂は確認されていません。

 ――門崎高架橋で疲労き裂損傷が発生した原因は
 磯江 はっきりとした原因はわかりませんが、構造に起因していると推察しています。片側3車線のところを4車線で供用していて、箱桁の張出部に輪荷重がかかっています。箱桁内部では疲労き裂は発生していませんが、鋼床版の張出部で疲労き裂が発生しています。

 ――デッキプレート貫通には至っていないのですか
 磯江 確認されていません。

鋼床版 TRSを用いて補強
ケーブルの送気システムの空気漏れ対策としてシーリングを交換

 ――対策は
 磯江 デッキプレートとUリブに当て板をしています。当初は、鋼床版側がTRS(スレッド・ローリング・スクリュー)で締め込み、Uリブ側がワンサイドボルトで行っていましたが、現在はどちらもTRSで施工しています。

 大鳴門橋ではほかに、ケーブルの送気システムの空気漏れ対策として、ケーブルバンド部のシーリングの交換を順次行っています。
 湿度40%以下の空気をつくって、その空気を送り込んでいます。もともと本四が開発したもので、関門橋やレインボーブリッジなど日本の多くの吊橋でケーブル送気が入っていますし、海外の吊橋でも採用されています。現場での初採用は、明石海峡大橋となります。

 その前に、因島大橋の解放調査をしたときに、表面から3層程度錆が出ていたので、対策をとることにしました。明石海峡大橋、来島海峡大橋は当初から空気が漏れないような構造にしてあります。それより古い橋梁は、ラッピングワイヤーを巻いて塗装をしているだけなので、そこにどのように空気を送り込むかということで、柔軟型塗料により再塗装をして、隙間があるところはすべてシールをしました。

コンクリート塩害対策 アンカレイジはアロンブルコート
陸上部被覆はNEXCO基準に準拠

 ――塩害・アルカリ骨材反応についてコンクリート構造物の対策は
 磯江 風が強く、飛来塩分も多い箇所に橋を架けています。
塩害対策事例としては、まず亀浦高架橋があります。橋脚に塩分が入ってきていて、下部についてはコンクリートを鉄筋まではつり、断面修復を行っています。また、電気防食もしています。大規模な塩害対策は、亀浦高架橋と門崎高架橋があり、完了しています。


亀浦高架橋と門崎高架橋の塩害対策

 ――ほかの橋梁では
 磯江 大規模更新・修繕で、鳴門北ICのIC橋と、それに近接した黒山橋が海岸から近くに位置していることから予防保全で対策を行い、黒山橋は完了しています。鳴門北ICのIC橋は今年度に表面被覆を行う予定です。
 ――亀浦高架橋のはつりはWJですか
 磯江 ヤードが確保でき、かつ、処理水等の飛散防止対策が可能な範囲をWJで施工しています。
 ――飛来塩分量はどのくらいでしょうか
 磯江 門崎高架橋の下部の鉄筋位置で2.59kg/m3です。表面は当然多いですし、大鳴門橋でも頂版では3kg/m3くらいの数値になります。海峡部の橋梁はかぶり厚を10cm取っていますので、数値は大きくありませんが、浸透はしているので将来的には鉄筋位置でも超えてくることになります。
 大鳴門橋は下部工をすべて塩害対策でライニングしています。ただ、劣化をしてきているので、1Aのアンカレイジの太平洋側面について、今年度に塗替え塗装を行う予定です。


大鳴門橋アンカレイジ・主塔基礎の過去の補修状況

5Aアンカレイジの補修状況(井手迫瑞樹撮影)

同劣化したコンクリート保護工(井手迫瑞樹撮影)

 ――日光により紫外線劣化が起きやすくなっていますが
 磯江 そうですね。平成12年にポリブタジレンやポリウレタンで施工しましたが、今回はアクリルゴム系(アロンブルコート)で対応しています。
 ――前回から18年で劣化しているとのことですが、今回はどのくらいの耐久年数を期待していますか
 磯江 同程度以上の耐久性は期待したいと思っています。
 ――1Aアンカレイジのみですか
 磯江 面積が大きいので、橋脚、5Aのアンカレイジも含めて計画的に、劣化している箇所から順番に塗り替えていく予定です。
 ――こうした対応は大鳴門橋だけですか
 磯江 そうです。坂出管理センターの瀬戸大橋などでも計画をしていると思います。明石海峡大橋は塩害対策でプレキャストパネルを採用しているので、塗装はありません。
 ――表面被覆は今後、アロンブルコートで施工していくのですか
 磯江 アンカレイジの場合はアロンブルコートでしたが、陸上部の被覆はNEXCOの基準で施工します。
 ――シラン系含浸材は使用しないのですか。凍結防止剤散布などの塩害対策として使用するケースが増えていますが
 磯江 本四の中では、使用しているところもあるかもしれません。当管内で使用する計画はありません。海峡部の塩分測定は定期的に行っていますが、陸上部の橋梁も実施していて、塩化物イオン量を測定していますが、数値は高くありません。
 ――断面修復をしたときに鉄筋が損傷しているということは、鉄筋を交換したケースは
 磯江 そこまでひどい断面欠損はありません。
 ――ASR由来の損傷は
 磯江 ASRについては確認されていません。
 ――国土交通省四国管内では、フライアッシュアッシュを使用しているケースがありますが、管内は普通コンクリートですか
 磯江 普通か高炉セメントです。ASRは西瀬戸自動車道や瀬戸大橋で発生しています。

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