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インタビュー詳細

海峡部の耐震補強は2020年度末までの完了めざす

本四高速坂出管理センター 瀬戸大橋を含む約18kmを管理

本州四国連絡高速道路
坂出管理センター
所長
西谷 雅弘 氏

 本州四国連絡高速道路株式会社 坂出管理センターは、瀬戸中央自動車道の南半分 児島IC~坂出IC間の約18kmの管理を担当している。いわゆる瀬戸大橋が含まれる区間であり、吊橋、斜張橋、トラス橋、PC高架橋など様々な形式の橋梁が存在している。そのため、耐震補強や維持管理も難しく、様々な補強工法、補強素材を駆使しながら、児島IC~坂出北IC間の耐震補強を2020年度末までの完了を目標に、急ピッチで進めている。その他、ASR対策や塗替塗装、新技術の開発や適用など、西谷雅弘所長に管内事業の詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


道路鉄道併用構造は延長12.3km、連続する橋梁・高架延長は13.4km

 海上部は本四独自の要領、陸上部は昭和55年道路橋示方書に準拠

 ――管内の概要から

 西谷 当管理センターは、瀬戸中央自動車道37.3kmの南半分、児島IC~坂出IC間の約18kmを管理しています。児島IC~坂出IC間にはハーフインター(本州側とのアクセスのみ可能)である坂出北ICしかなく、当社の管理センターの中でも一番管理延長が短く、ICの数が少ない事務所です。管理区間は18kmですが、半分以上は瀬戸大橋9.4km(①、以降丸数字が付く写真、図表データは本州四国連絡高速道路提供、写真図表ともクリックで拡大可能)が占めています。瀬戸大橋は道路鉄道併用橋(上段が上下4車線の道路、下段は複線の鉄道(JR瀬戸大橋線)のダブルデッキ構造)ですが、同様の構造がさらに約3kmあり、併用区間の延長は12.3kmに達します。道路と鉄道が分岐したあと、さらに道路単独の高架橋が続き、連続する橋梁や高架橋の総延長は合計13.4kmにも及びます。維持管理上、構造物へのアクセス性は良いとは言えず、常にJR四国さんと調整を図りながら、厳しい環境条件下における保全を行っています。一番最初に本州と四国を結ぶルートとして開通し、昨年(平成30年)、30周年を迎えましたが、効果的・効率的な維持管理に取り組んでいます。

 ――1978年10月に着工、1988年4月に完成し、約30年が経過していますが、この橋梁群はいつの道示に沿って建設されているのですか

 西谷 海峡部に位置する吊橋や斜張橋などの長大橋については、本州四国連絡橋公団(当時)が独自に作成した基準や要領が適用されています。たとえば、耐震設計には昭和52年(1977年)の要領を用いています。一方、スパンが200mより短い橋梁や高架橋は昭和55年(1980年)の道路橋示方書が適用されています。


坂出管内橋梁一覧

トンネルは1箇所4チューブのみ 橋梁は41橋を管理

 点検結果はⅢ判定が1橋、Ⅱ判定が21橋

 ――構造物の数は

 西谷 トンネル1箇所(鷲羽山トンネル、ただし、道路2チューブ、鉄道2チューブの4チューブ。坂出管理センターは道路2チューブを管理、施工方法はいずれもNATM、延長はそれぞれ約200m)のほか、カルバートがいくつかありますが、数多くの橋梁を管理しています。管内の橋梁数は41橋(上下線で分離しているものは、上下別にカウント)です。上り線と下り線に分離した橋がありますが、それを1橋として数えると、本線に18橋、その延長14.2km、ランプ部には15橋、その延長は2.6kmあります。本線橋梁の上部工形式別の内訳はRC橋が1橋、PC橋が9橋、鋼橋は8橋、ランプ部にはRC橋とPC橋がそれぞれ4橋ずつ、鋼橋が7橋あります。

 ――鳴門管理センターでは淡路島地震(平成25年(2013年)4月)で昭和55年道路橋示方書を適用して設計、建設された橋が一部で座屈し、対策を施しました。また、大鳴門橋のアンカレイジは厳しい塩害により広範囲に損傷し、現在リニューアル的な補修が行われています。坂出管内では同様の損傷や劣化は生じていませんか

 西谷 近年の地震による損傷は、幸いにしてありません。劣化については、近接点検をまとめた結果、橋梁41橋を分類すると、Ⅲ判定が1橋だけありました。Ⅱ判定は21橋、Ⅰ判定は19橋でした。Ⅲ判定は、櫃石島第三バスストップランプ橋(RC中空床版橋、橋長76m)でした。児島~坂出ルートには、与島、岩黒島及び櫃石島(いずれも香川県)という小さな島があり、そこには島民の方だけがご利用できるランプ橋があります。そのうちの一つである同橋にコンクリートの剥離が確認されました。それ以外については、総じて大きな損傷や劣化は見つかりませんでした。同橋は断面修復及び剥落防止工により、すでに補修が完了しています。

 ――鳴門管内では、床版が意外と損傷していました

 西谷 瀬戸大橋も交通量が増え、また、大型車混入率が高くなってきました。現在、赤外線サーモグラフィ(後述)を使って、鋼床版溶接部における疲労亀裂の有無等の確認を行っているところですが、損傷はまだ発見されていません。


耐震補強進捗 8橋が完了

 19橋が施工中で未着手は14橋

 ――橋梁耐震補強の進捗状況は

 西谷 海峡部を含む最短IC間の耐震補強を優先して実施していますが、当管理センター管内では、児島IC~坂出北IC間が該当します。瀬戸大橋だけを集中して耐震補強を行っても、陸上部にある橋梁や高架橋が損傷すれば高速道路への出入りができなくなり、意味を成しません。そのため、IC間の橋梁や高架橋の全数を包括して迅速に補強する方針としています。当社全体としては、交通量の多い神戸淡路鳴門自動車道(明石海峡大橋、大鳴門橋等を含む)を最優先して取り組んできました。このルートは、平成28年(2016年)5月に耐震補強を完了しました。瀬戸大橋を含む瀬戸中央自動車道は、平成26年(2014年)に耐震補強工事に着手し、来年度(2020年度)末までの完了を目標に進捗させています。

 平成28年(2016年)11月に、地震発生確率を考慮して、今後30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率が26%以上の地域にある橋梁について、令和3年(2021年)度末までに補強を完了させるということ、さらに、すべての橋梁の補強を令和8年(2026年)度末までに完了させるということが国の方針として発出されました。該当する地域の橋梁について、最短IC間の補強を優先しつつ、耐震補強に着手したところです。

 ――現状は

 西谷 当管理センターが管理する41橋のうち、現在のところ(令和元年(2019年)12月現在)、耐震補強が完了したのは8橋です。これには、補強が完了したものだけではなく、耐震性を照査した結果、補強不要と判断された橋梁も含んでいます。現在、耐震補強を進めている橋梁は19橋です。未着手は14橋です。

 児島IC~坂出北IC間にある橋梁数は全部で31橋です。このうち耐震補強が終わったものは先ほど申し上げたとおり、8橋です。耐震補強実施中が19橋、未着手が4橋です。令和2年(2020年)度末の完了を目指し鋭意工事を進めています。未着手の橋梁についても、現地準備工に着手しています。

 次に、坂出北IC~坂出IC間は延長2.6kmですが、この区間に橋梁が10橋あります。耐震補強済みはまだ無く、工事契約が完了して、これから現地準備工に着手します。このうち地震発生確率が高い地域に立地している橋梁は8橋です。令和3年(2021年)度末までの補強完了を目標に進めてまいります。


櫃石島高架橋 道鉄併用構造として初の免震支承の採用

 ジャッキアップ時に道路の路面高が変わらないように工夫

 ――具体の橋梁ごとに詳しく

 西谷 まずは瀬戸大橋区間から申し上げます。同区間は道鉄併用のダブルデッキ構造になっています。現在のところ、櫃石島高架橋(HVa)、岩黒島高架橋(IVa)そして与島橋(YB)の3橋について、既に耐震補強を完了しています。また、櫃石島の島民の方がご利用されるランプ橋1橋も耐震補強が完了しています。ちなみに、耐震性を照査した結果、補強不要と判断された橋梁は、櫃石島及び岩黒島と連絡するランプ橋の4橋です。

 櫃石島高架橋の耐震補強の内容は主に橋脚の補強です。アラミド繊維を用いてせん断補強しました。さらに、支承部も補強しています。櫃石島高架橋は、橋桁と橋脚が剛結されたラーメン構造になっていますので、支承が少なく、その分、補強量も少なくなりましたが、そのほとんどに補強が必要となりました。

 ――支承の補強とはどのようなものですか

 西谷 主に、橋軸直角方向の地震時において、支承に損傷が生じることが確認できましたので、橋軸直角方向に生じる変位を制限するためにRCブロックを設置し、支承の損傷を防ぐ方法を採用しました。

 櫃石島高架橋の南端にトラス構造になっている径間(約100m)が1径間(②)だけあります。本橋については、大規模な鋼製支承(②)4基を免震支承(③)に交換しました。耐震性照査の結果、列車が走行するすぐ上にある架線を支えるトラス部材の補強(④)が必要なことがわかりましたが、この部分の補強作業はとても困難な作業になります。列車の通過していない深夜の時間だけでは当該部材を補強することは不可能と判断し、橋梁全体系を考慮した耐震化を検討することになり、その結果、たどり着いたのが免震化です。免震支承に交換することにより、地震時に作用する慣性力を和らげ、減衰効果も期待でき、結果として、大規模地震に対して耐震安全性を確保できることが確認できました。


 ――免震支承とは具体的に何を使っていますか

 西谷 鉛プラグ入り積層ゴム支承です。

 JR四国さんもJR瀬戸大橋線の橋梁において、免震支承を採用した耐震補強を実施していますので、本橋梁の補強方法は、道鉄併用橋として初めての採用ということになります。

 ――道鉄併用橋への免震支承採用ですか。よく踏み切りましたね

 西谷 そうですね。免震支承の採用は、大規模地震時において、耐震安全性を確保するための手段です。地震が発生しないときや規模の小さい地震時には、免震支承が列車の走行安全性に悪影響を及ぼさないことを確認しました。また、単径間のトラス橋の一方の側の鋼製支承はもともと固定支承でした。免震化したのですが、結果として、大規模地震の際にのみ免震化するという特別な工夫を施すことになりました。

 ――免震支承を免震化させない、ですか。なかなか難しい要求ですね

 西谷 トラス部材の損傷は、橋軸直角方向に地震の影響を受けた場合のみです。ある規模以上の地震力を受けた場合にのみ、免震支承として機能するように、トリガーとなる部材を組み込み、そして、支承の剛性や特性・規模を決めていきました。

 ――同トラス桁は4,000tに達する重量構造物であり、道鉄ともに供用していますが、このような条件下でどのように支承を交換したのですか

 西谷 鉄道橋であるため、ジャッキアップ(⑤)(ジャッキアップ量6mm~10mm程度)する作業だけはき電停止時間内に行いました。トラス桁をジャッキアップした際は、道路面で大きな段差が生じていないことを確認しました。鉄道面にはレールが通っていますが、トラス桁の端部に折れ角ができないように緩衝桁と呼ばれる特殊な軌道となっていますので、鉄道面においては、ジャッキアップによる影響はあまり生じないことがわかっていました。

 むしろ段差の面で懸念していたのは道路橋です。トラス桁をジャッキアップすればその分、走行上看過しえない段差が生じてしまう可能性がありました。そのため、ジャッキアップ前に橋梁端部の鋼床版下の既設支承を撤去し、ジャッキアップに伴う道路面の段差を調整⑥)できるようにしました。

 その後、1箇所(支承2基を交換する際)あたり、1ヶ月程度ジャッキアップした状態を保持し、その間に既設の鋼製支承を細かく切断するなどして、撤去(⑦、⑧)しました。その際もできるだけ煙などを外部に出さないよう配慮しながら施工しています。その後、鉛プラグ入り積層ゴム支承を設置し、トラス桁をジャッキダウンして免震支承への交換が完了します。

 ――ジャッキの一台当たりの最大荷重能力は何tのものを採用したのですか? 

 西谷 支承2基を交換する際、最大能力10000kNのジャッキ(ここは大瀧ジャッキ製)を4台使用しました(⑤)