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構造及び施工上の特徴を探る

首都高速道路 東京西局プロジェクト本部 小松川JCT、渋谷入口が供用へ

首都高速道路株式会社
東京西局プロジェクト本部長

高橋 三雅

公開日:2019.11.20

渋谷入口 渋谷や六本木界隈の方々にとって首都高速道路が使いやすく
 羽田空港までの所要時間も6分短縮

 ――渋谷入口(下り)について
 高橋 新設する場所は渋谷駅東口側となります。3号線下りは池尻まで入口がありませんでしたので、中央環状線の手前に渋谷入口ができることで、東名高速にも行けますし、中央環状線の内回り・外回りにもアクセスできるようになり利便性が高まります。特に、渋谷や六本木界隈の方々にとって首都高速道路が使いやすくなります。これまでは、中央環状線にアクセスするためは、下り方向では霞が関入口を使用するか、2号目黒線天現寺入口からまわるか、中央環状線の五反田入口まで行かなければなりませんでした。


渋谷入口(下り)位置図

同工事概要

同工事内容

 ルート選択の多様性も期待できます。渋谷入口(下り)ができると、渋谷付近はフルランプ機能を持つようになります。すでに渋谷駅東側には上り線オフランプがあり、西側に上り線オン・下り線オフランプがありますので、中央環状線経由でも都心環状線経由も使えるようになります。ルートの多様性があれば、状況に応じて所要時間の短縮も可能になります。例えば、渋谷入口(下り)から中央環状線経由で湾岸線や羽田空港へ短時間で行けます。羽田空港までは、開通前は都心環状線経由でピーク時に33分だったのが、開通後は中央環状線経由で27分となり、6分短縮されます。
 ――渋滞の緩和は
 高橋 少なくとも池尻入口を利用されていた車が転換しますし、ルート選択も多様化されますので、効果はあると思います。今までは下道を使って池尻入口に向かっていた車が、渋谷駅前の明治通りとの交差点を通過していました。渋谷入口(下り)を使用することで、渋谷駅周辺の交通混雑緩和に資すると考えています。
 ――進捗状況は
 高橋 構造物は概成していて、設備の設置工事を行っています。料金所の設備と、一部料金所近辺で施設工事との乗り込み調整をしながら附属物の設置をしています。
 ――舗装はまだ着手していませんか
 高橋 着手済みです。街路との接続部以外は完了しています。
 ――来年3月に開通予定ですね
 高橋 開通は今年の12月19日と公表したところです。
 ――施工元請は
 高橋 ㈱フジタです。

構造 都心から上り勾配で渋谷入口に向かう
 本線線形に合わせ、ランプの構造が変化

 ――構造上の特徴は
 高橋 3号渋谷線本線は、都心側からトンネル状(アンダーパスとトンネルが混在)の道路になっていて、上り勾配で渋谷駅方面に向かっています。半地下構造が途中で地上部になり、橋梁で渋谷駅東口側に入っていく形態となっています。渋谷はもともと窪地で、そこに首都高速をつくるときに、都心方の青山学院の地上部は通れないのでその下を通過して地上に出て、渋谷駅を上越ししている形です。


渋谷入口平面図

 地表面は渋谷駅に向かって下り坂になっていますが、高速道路は逆に渋谷駅に向かって上り坂になっています。その箇所に、(赤印で書いたような)縦断計画でランプをつくります。工事延長は312mで、都心側から渋谷二丁目交差点を過ぎたところに入口があり、交差点から50m走った箇所に料金所を設置しています。縦断変化が大きく、擁壁で抑えた中にランプを入れ込む形にしています。そこから本線は高架区間になりますので、高架構造でランプのテーパー部(接続部)をつくる形になっています。このように、料金所区間の平面構造、擁壁で切土になるような構造、高架構造、という3つの構造形式となっています。


同縦断図

整備前後の断面図

 3号線の両脇には都道(六本木通り)があり、片側3車線の街路になっています。その街路を2車線にして、1車線の入口を新設しています。道路だけでしたら、1車線をつぶして入口1車線分を確保することになりますが、料金所設備を設ける必要があり幅が足りないため、3号線本線の上空に張り出す構造をつくっています。
 さらに具体的に言いますと、渋谷二丁目交差点の近くに入口を設けて、その先に本線に対してオーバーハングするような出っ張りをつくってその上に料金所を置きます。そこからは本線は上り勾配となっていますがまだアンダーパスなので、入口は擁壁を介して本線に擦り付けていく区間となります。さらに、一部盛土区間があって、終点部は高架区間になっていきます。高架区間はいくつか橋脚があって本線に接続していきます。(さらに断面図で補足)都心側がオーバーハングした構造で、既存の半地下擁壁に荷重をかけることはできないので、別の支持形態で料金所を支持させなければなりませんでした。そのため、T型擁壁の基礎の外側に鋼管杭を1.5m間隔で柱列打設して、それを基礎杭として、下半分RC構造で構築して、さらにその上にデッキ面を搭載しています。下部床版はRC構造(連続している版)でつくって、鋼コンクリート合成床版を載せてあります。その上に料金所の建屋のフレームを載せて、ブースを入れています。この箇所の大きな特徴です。(下工事内容表参照)


工事進捗状況写真

鋼製型枠のような合成床版
 擁壁に荷重をかけないように張出構造を造り上げる

 ――厚みのある合成床版ですね
 高橋 どちらかというと鋼製型枠の感じが強いかもしれません。料金所は既存の構造に悪影響を与えないように、既設基礎の外側に鋼管杭を打設して、擁壁に荷重を預けないようにして張出構造をつくりあげたことがポイントです。
 擁壁区間(延長150m)は、コンクリート矢板構造で本線のレベルに擦り付けるようにつくっています。


コンクリート矢板の施工

 高架部は本線の既設構造に基本的に合わせています。都心側から5径間連続RCホロースラブ橋梁(橋長76m)、渋谷駅側では2径間連続PC箱桁(橋長90m)が既設の本線構造です。入口の高架構造を接続するにあたっては、5径間については橋面を接続(一体化)させています。2径間部分は、そこまでの範囲を広げる必要がないので、途中に一番端の橋脚(Pa)を設置して31m区間だけ、橋面を新たにつくって縦目地を入れています(拡幅する必要があるのは1径間の途中までなので、上図Pa-Pb間が独立した橋梁)。


PC桁架設状況

 ――ホロースラブは現場打ですか
 高橋 そうです。


RCホロースラブ接続状況

 ――ヤードはどのようにしたのですか
 高橋 街路3車線あるうち、1車線は構造物が設置される空間になります。将来的に街路は2車線になります。
 ――擁壁や料金所の施工では1車線をつぶしているわけですね
 高橋 そうです。夜間はもう1車線を規制して施工しています。

施工時も既設構造への負荷は最小限に
 PC区間は縦目地に

 ――工法や材料での特徴は
 高橋 工法上の特徴は、既設構造に負荷をかけない形で新設構造物をつくっていることになります。本線上に張り出している料金所の床版を安全に設置するために工夫をしました。(左上のような)ユニット(張出床版鋼製型枠単部材)を現場に搬入します。1個ごとに交通規制をかけて設置することは合理性がないので、6組を束ねて軌条設備に載せて一晩で押し出しました。最終的にはこれを5回行って、それを一体化してコンクリートを打設して床面をつくりました。レール状のものに滑り面には滑り材を設置して、その上に鋼製型枠を載せてジャッキで押し、最終的には既設擁壁前面から約2.6mの出幅を持った長さ56mの鋼製型枠材を設けて、そこにコンクリートを打設して、床をつくりました。


渋谷入口(料金所部) 張出床版鋼製型枠押出し方法ステップイメージ

押し出し状況写真

SCデッキを採用している

 ――スライドさせた時点での固定方法は
 高橋 下のレールに鋼製型枠が転倒しないように固定してあるのに加えて、押し出しが完了したらアンカーで下のスラブに止めて転倒しないようにしました。送り出し時には転倒防止にカウンターウェイトを据えて、バランスを取りました。安全を期して、多重防護を図りました。
 ――合成床版はどの製品を使用しましたか
 高橋 川田工業の『SCデッキ』を使用しています。
 ――料金所の断面図をみると、もともとの擁壁の基礎が斜杭ですよね。かなり大変だったと思える図面ですが、そこに鋼管杭(φ1000、L=23.5m、36本)を1.5m間隔で打設しているわけですが、この間に擁壁の杭に影響を与えないように、矢板をかませることはしたのですか。しなくても大丈夫だったのですか。
 高橋 慎重に施工することで対応しました。杭種は先端根固めの中掘り杭です。


鋼管杭の施工

 ――合成鋼管ではなくて鋼管杭でしょうか
 高橋 そうです。
 ――深さは
 高橋 23.5mです。36本の鋼管杭です。
 ――橋梁区間について。既設の高欄は残すのですか
 高橋 合流区間なので既設高欄は撤去します。外に新たな高欄をつくります。
 ――地覆高欄を撤去して少しはつって、鉄筋を出して、つなげるイメージですか
 高橋 そうです。張り出している床版は生かす形をとっています。RCホロー区間はRCなので、はつり出してRC構造でつなぎ合わせましたが、PC区間は合流区間の先端部なので、ほとんど車が上を走る場所ではなく、接続するのにも無理がありましたので、縦目地にしました。
 ――縦目地は阪神高速道路が過去、メタルの信濃橋で騒音が発生したことがあり、今回、一体型構造にしました。ただ、ここはPC箱桁なので大丈夫だろうと思いますが。はつり出しは通常のチッパーで、あるいはWJでの施工でしょうか
 高橋 部位によって、手ばつりとWJの両方を使用しました。
 ――大変ですね
 高橋 狭いヤードで交通量も多いなかで、多様な構造体をつくっていくのは難易度の高い工事でした。しかも、既存の3号線を止めないで施工しなければなりませんでした。
 ――街路の1車線規制は夜間のみですね
 高橋 そうです。
 ――1車線規制は夜間連続ですか、限定的ですか
 高橋 杭を打設している間とコンクリート矢板施工時は毎晩です。基本的には、高速構造物の施工においては常に夜間1車線規制で施工していました。
 ――3号線側の規制は
 高橋 擁壁撤去時や合成床版送り出し時は夜間1車線規制を行いました。3号線は交通量が夜間減らないので、渋滞が発生しない時間帯で23時から5時までなど、曜日によって細かく調整しました。
 ――現場着手時期及び開通予定は。
 高橋 現場着手は2016年4月で、開通は今年の12月19日を予定しています。

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