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連結売上を2025年度で310億円超目指す

富士ピー・エス 堤 忠彦新社長インタビュー

株式会社富士ピー・エス
代表取締役社長

堤 忠彦

公開日:2019.11.07

大規模更新が今後10年業界を引っ張る
 売上だけでなく利益率の向上も目指す

 ――さて技術本部長として長年会社の屋台骨を支え、土木本部長、を経て、今年4月からは社長に就任されたわけですが、抱負は
 堤 2016年に2025年を最終年度とする中期経営計画を作った当時は、2019年の五輪直前をピークに徐々に公共事業の発注は右肩下がりになっていくと、厳しく見立てていました。
 ――しかし、公共土木においては大規模更新や国土強靭化など、堅調に推移しそうです
 堤 そう思います。現在は計画4年目ですが、大規模更新が、少なくとも今後10年は引っ張っていきそうな気配です。それに伴い当社も売上高、受注高とも堅調に推移しています。
 しかし好調な時にこそ、次のステージの成長戦略を明確化していく必要があります。
 当社としては現在の連結売上高278億円を2025年には310億円超まで伸ばしたいと考えています。しかもその額を安定的にこなしていき、営業利益率も当初目標の3%から5%に向上を目指します。


2018、19年度の連結業績と2020年度の同業績予想

 土木のけん引役であるNEXCOを中心とした大規模更新や保全事業については、2018年度で32億円の売り上げ実績となっていますが、これを25年度には80億円程度まで引き上げたいと考えています。また工場製品については2018年度現在で102億円の売り上げとなっています、このうちプレキャストPC床版の占める割合は約半分の50億円、建築用スラブが40億円です。これを25年度にはさらに120億円までのばしていきたいと考えています。


中国自動車道 東ノ迫池橋の床版取替施工

建築分野の売上比率を2025年度には3分の1まで引き上げる
 スイングループ継手を有するPCaPC床版を国・自治体向けに注力

 ――菅野前社長はプレキャストPCスラブ板など建築部門の拡充も積極的に進めていましたが
 堤 もちろん、建築部門についても積極的に営業を進めます。現在売り上げに占める比率は25%(75億円)ですが、これを中期経営計画終了時には33%(100億円)を達成します。
 ――重点的な営業項目および製品と今後投入予定の製品について
 堤 当社は縦軸に事業セグメント、横軸に事業分野を据えた成長マトリックスを描いています。事業セグメントは土木・建築であり、分野のキーワードは生活、災害、環境です。生活はミッシングリンクの解消など道路・鉄道ネットワークやマンションなどの住まいであり、災害は震災後の災害復興や、耐震などの防災・減災、環境は風力などの再生可能エネルギーなどが念頭にあります。


東海北陸自動車道 惣則橋

阿蘇長陽大橋の復旧

 その上で、新しい製品の導入として、1つはスイングループ継手構造を有するプレキャストPC床版があります。床版に垂直に取り付けていた継手部の鉄筋を斜め配置することで版厚を薄くできるもので、最小版厚を現在の220mmから180mm程度に薄くできるプレキャストPC床版です。合理的な設計が可能であり、版厚を全体的に薄くすることができるためコストも縮減できます。現在、プレキャストPC床版は大規模更新で多く使用されていますが、今後は国交省や自治体が管理する橋梁にも広がってくることが予想され、ターゲットとして考えています。


スイングループ継手の概要

 2つ目は、建築物の1階部分に使う「DM板」です。建物の最下層の床下は空間が狭く断熱材工事などの作業が困難です。DM板は予め断熱材を打ち込んだプレキャストの床材であり、断熱材の施工手間を大幅に軽減できます。ノンサポートでの施工も可能で、施工期間も大幅に短縮できます。
 3つ目は風力発電です。鋼・PCのハイブリットタワー、博多湾で実証プロジェクトにも参画しているコンクリート製浮体の普及、活用も積極的に展開していきたいと考えています。

保全事業の拡充 専門部署設ける
 FITSAをオープンテクノロジー化し、保全需要の創出を図る

 ――拡大する保全事業の拡充にはどのように取り組みますか
 堤 3年前に保全分野に本腰を入れるべくエンジニアリング部にメンテナンスグループを設け、現在は8人が在籍しています。富士ピー・エス単体として、保全分野の技術力を高めるよう努力しています。
 また、個別技術としては、PCグラウトの充填調査法である『FITSA』を開発しています。京都大学の大津政康教授の指導のもと開発したもので、SIBIE法やAE法を用いた非破壊検査技術です。もともとは流体を感知する技術として施工品質の保証~グラウトがきちんと充填されているかどうか~をするために開発しました。ただ、これは既設橋のグラウト充填点検手法としても使えるので、既存構造物の健全度診断にも活用できると思います。
 現在は国土交通省のマッチングイベントに盛んに参加した結果、色々な機関や自治体から引き合いが来ています。北海道では、舗装の上からコンクリート床版の空洞を検知できないか、という風にも使われています。




FISTAの概要及び調査実績写真

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