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インタビュー詳細

2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①川田工業

大型物件は五輪後も需要堅調 作業効率向上の研究開発を推進

川田工業株式会社
代表取締役社長
川田 忠裕 氏

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第1回は、川田工業の川田忠裕社長と駒井ハルテックの田中進社長の記事を掲載する。


 ――まず、昨年度(2018年度)の業績について

 川田 18年度は、川田テクノロジーズとして売上高1,183億6,900万円、営業利益60憶6,500万円と過去最高益となった。グループ体制に移行して実質10年目に当たることから株主に記念配当を含めて100円配当を実施した。本業はおおむね順調といえる。

 ――今年度の状況は

 川田 今年度は、17年度から実施しているグループの第1次中期経営計画の最終年度となる。その数値目標は達成できると思っているが、引き続き、ICT、ロボット、AIを活用した合理化・省人化を実現した工場・工事現場を目指し、収益力の向上に取り組んでいく。前年度に比べると下がるが、売上高1,200億円、営業利益48億円を見込む。ただ、12年度からの右肩上がりのトレンドは継続している。

 一方、最近は橋梁、建築鉄骨ともに発注が大型化していることもあり、当初予定の期中に完了することができない期ずれが発生した場合、業績に影響を与えるリスク要因となっている。

 ――建築鉄骨については

 川田 受注面では東京五輪後の物件や計画が出件し始めている。首都圏では、虎ノ門・麻布台地区などがあり、今後も東京駅周辺の八重洲周辺、日本橋地区、高輪ゲートウェイ駅地区など10万tを超えるような超大型再開発案件を含め、再開発プロジェクトが順次始動してくる。そのため、23年度くらいまでは高い需要を見込んでいる。

 さらに23年度以降も常盤橋、六本木、渋谷地区、帝国ホテル周辺などの計画が聞かれ、大型物件は底堅く動くと予測している。また関西方面でも、大阪万博関連、旧大阪中央郵便局跡地の再開発など複数の計画が始動すると聞いており、当面は相当量の需要があると捉えている。

 そのため、工期のずれが他物件の工程に大きな影響を与える可能性が考えられる。マスター工程表に基づいて作成した鉄骨製作の工程表を、設計事務所、ゼネコンとファブ各社で合意する方法を当社でも運用している。共通認識が進んではいるが、実際の運用にはまだ課題も多いと感じている。



(左写真)日本橋室町三井タワー (右写真)ミツフジ株式会社福島工場


 ――橋梁分野は

 川田 新設橋梁は依然、受注競争が激しい情勢にある状況は変わっていない。

 特に今年度の発注量に関しては、端境期で昨年を大幅に下回ると見込んでいる。来年度以降の新設橋梁の発注に関しては、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の一環としての高速道路の暫定2車線区間の4車線化、大阪湾岸道路の西伸部など発表されているが、緩やかな減少傾向が続くとみられ、近い将来には新設道路橋は20万tを下回ると見込んでいる。



天龍峡大橋(仮称


 一方で橋梁の老朽化に伴う大規模修繕・改修、床版取替えを中心とした工事が増加傾向にあり、当社グループとしても積極的に取り組んでいる。ただ、現場比率が増えることになるため、これに対応できる十分な人材を確保する必要などから、現状ではまだ、受注が限られている。

 ――設備投資については

 川田 今年度は四国工場で自社設備による浜出しを可能にするため、大型ジブクレーンの新設を進めている。また、栃木工場では門型クレーンのリニューアルを実施する。

 ――技術・研究開発については

 川田 当社グループ全体で、工場や工事現場などの作業効率をICT、ロボット、AI技術を活用して向上させる研究に取り組んでいる。

 なかでも、工事現場は技術開発における宝の山と捉えている。安全パトロールでは私自身も各現場を回り、いろいろな要望を聞くとともに、研究員が現場を回り、常にニーズの洗い出しを行っている。

 その結果、常に作業員の健康管理を把握できる「IoT健康管理システム」、鉄骨柱の建入れ精度をリアルタイムに管理できる「川田鉄骨建入れシステム」、溶接部を可視化する溶接可視化技術を用いた「溶接マスク」、IoTおよび音声認識AIを用いた点検調査技術などが開発できた。今後も、業界全体の生産性向上も見据え、オープンイノベーションを利用し、工期短縮、人手不足解消、安全性や品質向上につながる技術などの開発を進めていく。

(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略 2019年9月11日掲載)