道路構造物ジャーナルNET

プレキャストPC 床版接合部分の性能試験方法、床版上面断面修復工法など

NEXCO3社が2年ぶりに橋梁に関わる技術基準を改定

NEXCO総研
道路研究部
橋梁研究室長

長谷 俊彦

公開日:2019.07.31

床版防水 グレードⅠ規格Bを廃止
 7工法が規格Aを満足

 ――床版防水のグレードⅠ規格B の廃止について
 ⻑⾕ NEXCOの床版防水は高性能床版防水であるグレードⅡを基本としていますが、既設橋のRC床版において、施工条件等によりグレードⅡの品質確保が困難な場合にグレードⅠの規格を設定していたものです。
 グレードⅠは規格がAとBに分かれていましたが、橋面舗装の舗設負荷を考慮した照査項目を満足させる規格Aに統一したものです。規格Bを設定していたのは、高性能床版防水のグレードⅡの規格を新設する当時(2010年)に、規格Aを満足している工法が無かったためですが、現在はシート系工法で1工法、塗膜系で2工法、複合型で3工法と規格Aを満足するものが製品化されたことから規格Bを廃止するに至りました。
(グレードⅠ規格A合格製品)
シート系:①フレッシュシート工法(常温シート系)
塗膜系:②フレッシュコート工法(As加熱型)、③セロシールSS-B 工法(As加熱型)、
複合型:④シガムコート工法、⑤デッキコート複合防水工法、⑥エポックシール工法

塗膜除去・素地調整方法 5種類の手法を評価
 各種ブラスト工法やIH、塗膜剥離剤、レーザーブラストなど

 ――次に継続中の研究について鋼橋の塗り替え時の塗膜除去や素地調整方法から
 ⻑⾕ 以前から試験片を用いた室内試験による研究を行っています。同研究では非金属系乾式ブラスト(フェロニッケルスラグ)、ディスクサンダー、金属系乾式ブラスト(スチールグリッド)、ブラスト面形成動力工具(ブリストルブラスター)、湿式ブラスト、塗膜剥離剤、電磁誘導加熱法(IH式塗膜剥離)、レーザーブラストなど9種類の工法について試験片レベルで残存表面塩分量、表面粗さ、塗膜付着力、残留さび・内在塩分状況、腐食耐久性、粉じん量、作業時間、施工費用、廃棄物量を評価しました。そして、塗替え後の耐久性を確かめるため、試験後は塗り替え(IHおよび塗膜剥離剤は塗布形素地調整軽減剤(サビシャット)を塗布した上で塗替え)を施して親不知高架橋の高架下に暴露しています。暴露期間は今年で丸4年です。
 その後は、実物大の鈑桁の桁端部を模擬した試験体を5体作り、それを用いて先の室内試験で結果が良好であった5種類の素地調整方法について、施工性や素地面の状態、環境性について評価を行っています。これについても供試体は親不知高架橋の高架下に暴露しています。

 ――5 種類の方法とは、具体的にどのような工法ですか
 ⻑⾕ ①フェロニッケルスラグを用いた乾式ブラスト工法、②スチールグリッドを用いた循環式の乾式ブラスト工法、③研掃材に銅スラグを用い、腐食抑制剤としてマグネタイトを用いた湿式ブラスト工法、④一般部をディスクサンダーでケレンした後レーザーブラストによって処理および特殊部をレーザーブラスト処理する工法、⑤一般部はIH(RPR)+乾式ブラスト工法によって処理して特殊部をディスクサンダー+剥離剤による剥離+乾式ブラストによって施工する工法です。
 これらについて施工状況及び素地調整後の剥離状況、作業時間、素地面へのマイクロスコープによる表面の観察、表面粗さの測定、撤去塗膜や研掃材および養生材などの廃棄物量の測定、粉塵量(mg/m3)の測定、騒音レベルの測定などを評価しました。


 ――今後、こうした成果をどのように⽣かしていきますか
 ⻑⾕ 現在は、湿潤化相当環境下での塗膜除去を行った上でブラストの併用により素地調整し、塗り替え品質の安定を進めていくことが必要です。その上で、施工時間の縮減、粉塵、騒音、廃棄物量の削減や素地調整品質をより向上できる現在の研究を落とし込んでいけたらと考えています。

鋼橋防食仕様 剥離抑制型塗料の研究を進める
 下塗りに用いる変性エポキシ樹脂塗料の代替材料としてを検討

 ――鋼橋の防食手法について
 長谷 目新しいものとしては、四国総研とNEXCO総研の共同研究で剥離抑制型の弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料の鋼橋への適用と性能評価に関する研究を進めています。剥離抑制に関する性能評価の試験方法を確立するため、耐剥離性試験に関する比較検討を行っています。
 昨年、親不知高架橋の高架下で実際に剥離抑制型の塗料を用いて、実物大供試体の添接部に試 験施工しましたが、施工性については従来型の塗装と同等であることを確認しています。今年度、耐剥離性試験法の検討を実施し、剥離抑制型塗料の性能評価が可能となるようにできればと考えています。基本的には変性エポキシ樹脂塗料下塗の代替としての適用を考えています。そのほか、親不知高架橋の試験フィールドでは、錆面用の塗料の暴露試験も行っています。


グースアスファルト防水 実物大供試体での試験施工
 グレードⅡ 不陸調整材料の性能評価試験方法と要求性能を検討中

 ――グースアスファルト防水およびグレードⅡs の使い分けについて
 ⻑⾕ グースアスファルト防水については、今年度に舗装研究室において実物大供試体での施工試験を行います。その上で、今後、防水についての基準化を検討していく予定です。また、既設RC床版に対応したグレードⅡについては、これまでは不陸調整を10mm以下に抑えた上で防水工の施工を行うこととしていますが、不陸調整の性能評価試験に耐えうる材料を使用できるように、性能評価試験法と要求性能を検討中です。
 グースアスファルト防水を規定化する際には、グレードⅡsは養生規定を無くし廃止することになります。ただしグースアスファルト防水の普及のためにはクッカー車の数が限定的であることから設備面で施工が可能となる都市圏に施工地域が限定されることも考えられます。

高剛性アスファルト舗装 グースに比べ累積損傷を1/3程度に抑制可能
 SFRCに比べ施工時間を2割程度に短縮 コストは半分以下に縮減

 ――鋼床版補強を対象とする高剛性アスファルト舗装について
 ⻑⾕ 高剛性アスファルト舗装は、既設鋼床版研掃後、エポキシ系プライマー次いで接着防水層を塗付し、主材となる高剛性舗装を敷設し、タックコートを挟み表層舗装を敷設する構造です。
 施工対象が少ないことから、要領改訂には取込む予定はありませんが、昨年度までの研究で施工技術として確立しています。鋼床版は一般的にSFRCにより予防保全的な疲労対策を行いますが、施工に時間がかかることから、規制等の制約により小面積での施工を余儀なくされます。
 高剛性舗装はSFRCと比較して施工時間の短縮が可能となることが長所です。疲労耐久性はSFRCには劣りますが、グースアスファルト基層に比べると鋼床版疲労の累積損傷度として3分の1程度に抑制可能となり、現場の適用条件が合えば対策としての効果が期待できると考えています。またSFRC補強と比べて、施工時間が2割程度短縮でき、コストは半分以下に縮減できます。合わせて舗装撤去の際は、基層部分が通常の切削機で撤去可能であり、接着防水層はウォータージェットで撤去することができます。

 ――高温時は疲労耐久性向上効果が減少する可能性はありませんか
 ⻑⾕ 輪荷重走行試験の結果、試験温度50~60℃で400万輪走行させた結果、ひび割れや轍掘れは見られませんでした。舗設前後のひずみ比率は、常温(20℃)時に比べ、高温時(60℃)は1.5倍程度上がりますが、高剛性舗装の施工により鋼床版疲労に影響する発生ひずみを3割程度低減する効果を示すことが確認されました(図7 A~Eの計測値)

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