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仙台南部道路の付加車線設置事業は2021年度の完成目指す

NEXCO東日本仙台工事 2020年度内の完成目指し常磐道の4車線化進める

東日本高速道路
東北支社
仙台工事事務所長

広瀬 剛

公開日:2019.07.29

 東日本高速道路東北支社仙台工事事務所は、日本道路公団による設置から数えて52年を経過する「老舗」の工事事務所だ。現在は常磐道の4車線化や仙台南部道路の工事を進めており、常磐道岩沼IC~山元IC間約14kmの4車線化は2020年度の完成を目指し、急ピッチで施工を進めている。管内構造物の特徴と進捗状況について、広瀬剛所長に聞いた。(井手迫瑞樹)

常磐道4車線化は約14km、橋梁は6橋
 仙台南部道路付加車線事業は3km、広瀬大橋の2期工事を施工中

 ――管内事業の概要から
 広瀬 仙台工事事務所は、日本道路公団時代に設置されてから52年経過し、NEXCO東日本の中でも歴史のある工事事務所で、諸先輩方が約210㎞の開通に携わってきました。
 仙台市内は「ぐるっ都・仙台」という愛称に象徴されるように、仙台市中心部を取り囲むように自動車専用道路が環状整備されています。北と南は仙台北部道路、仙台南部道路、西は東北自動車道、東は仙台東部道路と三陸沿岸道路によって形成されています。
 交通量は、三陸沿岸道路と東北自動車道が特に多く、それぞれ4~5万台の日交通量に達します。沿岸部から仙台東部道路を抜けて、その南に位置する常磐自動車道の日交通量は、岩沼~山元間で17,000~21,000台に達しています。
 仙台南部道路のうち、付加車線設置を予定している今泉~長町間の日交通量は多いところで25,000台に達しています。特に朝方、仙台の方から入ってきて、常磐道なり東北道に行くのに、この今泉~長町間が混雑します。
 そうした管内の状況を受けて現在の事業は大きく分けて3つあります。
 1つが常磐道の4車線化です。岩沼IC~山元IC間約14km について2020年度内の完成を目指して工事を進めています。2016年6月に事業許可された区間で、実際に発注されたのは2017年6月のことであり、現場は同年10~12月にかけて順次動き出しました。現場の工事着手から約4年で供用しなければならず、急ピッチで工事を進めています。


常磐道の4車線化概要(東日本高速道路提供、以下注釈無きは同)

 2つ目は仙台南部道路の今泉~長町間約3kmの付加車線設置事業で、2021年度の完成を目指し事業を進めます。


仙台南部道路付加車線事業

 3つ目は、東北自動車道の菅生スマートIC(村田町内)の整備事業です。これは2022年度内の完成を目標としています。構造は橋梁と盛土です。

菅生SIC スポーツランドSUGOなどへのアクセス向上 

 ――菅生SICの近くも45,000台の交通量が集中していますね
 広瀬 渋滞の緩和が主たる目的ではなく、SIC予定地の近くにはモータースポーツイベントが開催されるスポーツランドSUGOへのアクセス性向上や、周辺住民の仙台方面へのアクセスの向上が期待される事業です。ちなみに村田町は凄く古い町で、関東で言えば川越のような、地域の古都といえる街並みがある風情のある自治体です。


菅生SICの事業概要

常磐道4車線化 鋼橋が5橋、PC橋が1橋
 軟弱地盤多く、上部工が軽い鋼橋が合理的

 ――常磐道4車線化事業を具体的に
 広瀬 常磐道が暫定2車線で供用されたのは2015年3月ですが、内陸部の東北道+国道4号が約1~4千台減少したのに対して、沿岸部の常磐道+国道6号は約7~8千台増加しました。特に増減は高速道路で顕著で、東北道が最大3千台減少しましたが、常磐道は同7千台増加しました。
 当事務所では、常磐道の岩沼IC~山元IC間約14kmの4車線化を進めています。
 岩沼IC~山元IC区間は3つの工事区に分けて工事を進めています(下図)。土工工事は橋梁下部工と盛土とボックスカルバートの延伸が入っています。橋梁はJR跨線部1橋と県道横過部が2橋、鐙川排水路を渡河する橋が1橋、阿武隈川を渡河する阿武隈大橋、市道の跨道橋1橋があります。形式は鋼橋が5橋でPC橋が1橋です。


4車線化工事詳細

 ――NEXCO東日本でこれだけ鋼橋が多く、PC橋が少ないのは珍しいですね
 広瀬 本区間は盛土が中心で路面のエレベーションが低くなっています。さらに軟弱地盤であることもあり、支持地盤までの杭長は長くなる傾向にあります。したがって上部工を軽くする方が合理的であり、鋼橋を採用しました。
 また、路線の特徴として、田園地帯を盛土構造で通過します。そのため、道路や水路の交差箇所にはボックスカルバートが必要となります。現在はⅠ期線の分しか延長がないので、Ⅱ期線の分まで伸ばす必要があります。
 現場は側道が無く、圃場整備地区の田圃を一部借地して工事用道路を作るところから始めました。
 現場の土地改良区や県の方々の多大なる協力のもと、借地することが可能になりました。
 工事用道路は実に14kmの延長です。Ⅰ期線を作るときはⅡ期線の用地があるためその中で施工できますが、コスト削減の折、側道整備は削られていたわけです。したがって工事用道路のための借地、建設するところから始めなくてはなりませんでした。工事が終わった後は原状回復します。

カルバートの延伸は60基
 パイプカルバートの延伸は29基

 このような細かく、地道な作業がたくさんあります。カルバートの延伸は60基、パイプカルバートの延伸は29基あります。


建設中のカルバート(井手迫瑞樹撮影)

 ――カルバートは現場打ちですか
 広瀬 現場打ちもあるし、プレキャストもだいぶあります。
 冬の農閑期に素早く作らねばならない箇所はプレキャスト、それ以外は現場打ちで施工しています。

 ――その上で盛土を施工するわけですね。使用する土はどのように手当てしたのですか
 広瀬 民間土取場からの客土(購入土)です。山元町や亘理町の土取場から採取した土を盛土します。総量は70万㎥に及びます。これをウナギの寝床状に敷くように施工します。この所々に橋があるわけです。


盛り土をしていく(井手迫瑞樹撮影)

 ――盛土の進捗状況は
 広瀬 今、カルバートの延伸と橋梁下部工が進んでいる状況で盛土はそれほど施工されていません。まだ十分間に合うと考えています。

 ――地盤状況は
 広瀬 軟弱地盤ですが、Ⅰ期線ではプレロードをかけたうえで施工しており、その効果がⅡ期線範囲内においても及んでいます。モデル施工した結果、通常のスピードで沈下せず盛土できることが分かりました。ただ、ボックスカルバートの支持力を高めるためにその部分だけ土を砂利に置き換えるような対策を施しています。なお、橋梁の杭長は40~50m程度あります。
 例えば鐙川橋は(場所打ち)杭長が40~45mに達します。1基当たりの本数は8~12本で収まっています。杭の直径は1200mmです。荒浜橋では杭長が50mに達する個所もあります。

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