道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①川田工業

安定した受注量の確保を目指す 資材・労務費の高騰、運搬問題など顕在化

川田工業株式会社
代表取締役社長

川田 忠裕

公開日:2018.08.27

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第1回目は、川田工業の川田忠裕社長と駒井ハルテックの田中進社長の記事を掲載する。

 ――まず、昨年度(2017年度)の状況についてお伺いします
 川田 2017年度は、売上は2016年度を上回り、収益は2016年度比でプラスにはならなかった。ただし、受注・収益とも年度計画値を上回り、まずまずの結果であった。
 経営基盤的にも本業はおおむね順調といえる。工場の生産性向上を図る設備投資などを実施し、その効果も現れつつある。数字面だけにこだわらず、社内状況は好転していると実感できる1年だったと捉えている。
 ――今年度の状況は
 川田 前年度からの繰越工事が多いため、受注目標は前年度の実績に比べ低めに設定した。引き続き安全第一、不具合をなくすよう「安全・品質世界一」のスローガンを掲げている。
 ――建築鉄骨については
 川田 受注面では東京五輪までと五輪後の案件の端境期的な時期となる。ただ、来年以降、首都圏だけでも虎ノ門・麻布台、東京駅周辺の八重洲界隈、日本橋地区、浜松町や豊洲地区など10万tを超えるような超大型再開発案件を含め、再開発プロジェクトが順次始動してくる。五輪後から着工する大型案件も散見され、しばらくは相当量の仕事があると捉えている。
 ただし、相変わらず設計変更が多いことから、図面の決定に時間がかかっているのが最大の悩みといえる。一昨年からマスター工程表に基づいて作成した鉄骨製作の工程表を、設計事務所、ゼネコンとファブ各社が合意する方法を当社でも運用している。共通認識化が進んではいるが、なかなか反映されない。さらに、資材費、労務費など直接費の高騰、機材、輸送の確保問題が顕在化している。


左/(仮称)日本橋室町三丁目地区市街地再開発計画A地区新築工事(東京都)
右/寿屋フロンテ株式会社九州工場(福岡県)

 ――橋梁分野は
 川田 新設橋梁は依然、受注競争が激しい情勢にある状況は変わっていない。今年度の発注量に関しては、横ばいから緩やかな減少傾向が続くとみられ、道路橋は20万t前後とみている。
 新設橋梁の発注は順調だが、豪雨災害などによる発注延期の可能性もあり、注視していきたい。最近の発注状況をみると、案件が大型化されつつあると感じている。そのため、応札できる業者が限定され、また、現場技術者の確保がネックとなりつつある。
 一方、橋梁の老朽化に伴う大規模修繕・改修、床版取替えを中心とした工事が増加傾向にあり、当社としても積極的に取り組んでいる。前年度は川田工業単独で首都高速の50億円規模、宮城県で地元ゼネコンとのJVによる25億円強の案件を受注するなど、床版取替え、補修工事の比重が大きな割合になってきている。ただ、これらの案件は新設とは異なり、現場比率が増えることになるため、これに対応できる十分な人材を確保する必要があることから、グループ企業の川田建設との技術協力などを含め効率的に進めていきたい。


豆谷橋梁(富山県)

小本高架橋(岩手県)
平成30年度国土交通省東北地方整備局優良工事表彰局長表彰受賞

 ――その他の分野は
 川田 システム建築をメーンに取り組んでいる建築事業は、受注の遅れなどから、前年度は売り上げが伸びず苦戦した。受注時期が遅れた分、繰越工事として残り、今年度は繁忙状態になっている。さらに、倉庫建築物などに採用される床スラブ付き鉄骨小梁の接合部を改良した「連続小梁」を開発、コスト削減を実現し、すでに4件の施工実績がある。また、新たに開発した「ハイパーブレース」を使用し、4階建ての倉庫を建設するなど、これまで以上に新しい形に注力している。
 一方、工場や工事現場などの作業効率をロボット、IoTやAI技術を活用して向上させる研究をグループ全体で実施している。RPAというソフトウェアロボットを用いると、準備作業が必要ではあるが、人が丸一日かかっていたある事務作業を3分で処理した。さらに手書きだったものを、タブレットなどを用いて音声入力で処理する手法の開発を進めている。今後これらをグループの各分野で展開できないか検討していく。


那賀川大橋(徳島県)
平成30年度国土交通省四国地方整備局優良工事表彰局長表彰受賞

 ――設備投資については
 川田 前年度にビルドボックスの生産効率向上を図るために実施していた栃木工場のライン更新工事が完了し、その生産性は従来の1・5倍となった。今年度は四国工場で大型クレーンの新設を予定している。また、前年度から今年度にかけて富山工場や四国工場でそれぞれ新業務棟を建設しており、就労環境を改善することで働き方改革につなげていきたい。
(聞き手=佐藤岳彦、文中敬称略 2018年8月27日掲載)

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