道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ②駒井ハルテック

成長サイクルの構築目指す 変える勇気、変わる勇気を

株式会社駒井ハルテック
代表取締役社長

田中 進

公開日:2018.08.27

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第1回目は、川田工業の川田忠裕社長と駒井ハルテックの田中進社長の記事を掲載する。

 ――前年度の業績から
 田中 2017年度業績は連結ベースで売上高363億1,000万円、営業利益15億5,800万円と対前期比で減収増益。黒字確保は5期連続となった。昨年4月に将来に向けた成長サイクルの構築を目指す中期経営計画2017をスタートさせたが、初年度の目標を達成することができた。
 ――足元の事業環境は
 田中 橋梁は新設需要が少なく、逆に鉄骨は出件が集中しすぎていて、経営環境的には厳しさがある。とくに鉄骨は、量はあるものの技術者・技能者の不足、鋼材や資材のひっ迫、労務コストの高騰、輸送車の確保難などが深刻化。さらに契約工程のずれによって平準工程の確保が難しい状況にある。
 それを補うために夜間操業や人的補強を図れば、必然的に収益が悪化する。そればかりか、予定していた他の工事の受注そのものを断念しなければならない事態も生じ得る。そうした状況に陥らないよう、施主、設計コンサル、ゼネコンとの会話を進めているところだ。また今夏は猛暑の影響で生産性そのものが下がっており、専門業者だけでなく建設業全体の供給能力の低下が懸念される。
 ――工場の稼働状況は
 田中 橋梁、鉄骨ともフル稼働の状態が続いている。橋梁は新規受注で苦戦しているところであるが、近年は大型再開発などで特殊大型鋼構造物が多く含まれた構造になっている案件が多く、そうした部材に橋梁加工設備を活用するなどして、全体の生産山積調整を図っている。
 ――今年度の業績目標は
 田中 売上目標は連結ベースで410億円。営業利益は前述した環境の厳しさを考慮して前期実績をやや下回る12億円を見込んでいる。中期経営計画2017の2年目として、変革期における成長戦略と、働き方改革に重点を置いた基軸をより強固なものとし、あらゆる課題に着実に取り組んで成果・効果を発揮させる1年にしていく。


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 ――今期の設備投資計画
 田中 近年は年間3~5億円前後の設備投資を行っており、今期も同規模の投資を計画している。工場内設備は、単なる省力化だけでなく、生産性や安全性を一層高めるためのICT関連機器・設備への更新を進める。また工程・業務等の管理システムの電子化などソフト面の強化にも取り組んでいく。
 昨年4月にICT推進室を立ち上げたが、すでに製品をQRコードとGPSで管理するシステムを確立し、一部運用を開始している。ICTやBIM・CIMを含めた新たなシステムを全工場で展開することで、生産調整や工程管理をよりスムーズに進めることができる。将来はスマート工場、次世代工場の構築につなげていく。その実現が新たな仕事、エンジニアリングを生み、新規事業の創造にもつながっていくと考える。
 ――各部門の課題と戦略
 田中 橋梁は、国内道路橋需要が20万t台で推移するなか、長寿命化に向けた予防・保全や維持補修事業、修繕工事への取り組みがより重要になってくる。その対応に向けた技術者確保、育成など体制整備に努めるとともに、大規模更新など工場稼働に寄与する案件、収益確保につながる案件の選別受注を進めていく。
 鉄骨は首都圏を中心とした再開発案件が集中するなか、同業者や関係会社とのネットワークを深化させ、それを活かした横断的な技術者集団としての取り組みが課題となる。また昨年は小規模ながら海外で鉄骨と橋梁を各1件受注した。こうした実績を重ねながら、海外での事業性についても検討を進めていきたい。
 ――最後に今後の抱負を
 田中 さまざまな意味で今は変革期にある。だからこそ全社員で意識改革が必要だという認識を持ち、変える勇気と変わる勇気、やり遂げる強い信念を持って業務に取り組むことが重要だ。当社は2020年に合併10周年を迎える。そこに向けて新たな駒井ハルテックを誕生させる意識を持って、さらなるレベルアップを図っていく。
(聞き手=田中貴士、文中敬称略 2018年8月27日掲載)

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