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鋼橋技術研究会の研究から始まった

鋼橋におけるワンサイドボルトの研究①

明星大学
理工学部 総合理工学科(建築学系)
教授
鈴木 博之 氏

支圧接合によるワンサイドボルト

 TRねじの研究へ

 ――スレッドローリングねじ(TRねじ)の研究について

 鈴木 TRねじは、前もってタップを切っていない(ねじ径-0.5mm)の孔に自らねじを切りながら接合できるねじで、接合後の力の伝達方式は支圧接合となります。

 これも片面施工の一環で研究を始めましたが、この時には鋼技研の維持管理部会を退会していたので、研究室のテーマとして着手しました。ワンサイドボルトと同様、作業の反対側に人(あるいは手)を入れずにすむ工法で省人化できますし、作業が比較的楽です。ただし、まだ径の大きいものがなく、やっとφ16mmが出てきた状況です。それまではφ8、10、12mmしかなかった。建設機械に主に使われていたということです。土木にはもう少し太いのが欲しいですね。 


 ――今はどのような分野に対応しようとしているのですか。

 鈴木 最近、学会で発表したのは、鋼床版のデッキプレートとトラフリブの長手方向の溶接に発生しているき裂の補修です。ルートからデッキプレートに進展するき裂ではなくてビード表面に出てくるき裂の補修です。具体的には補強部材を新たにデッキプレートとトラフリブに取付けます。トラフリブ側はワンサイドボルトで施工するので、特に新たに検証する課題はないと思いましたが、問題はデッキプレート側です。デッキプレートの上面には防水層やアスファルト舗装があるため、これらに影響を与えないようにTRねじを使用することを想定しました。つまり、デッキプレートにねじ孔をあけますが、ボルトの場合のように孔を貫通させないようにしてデッキプレート上面の防水層やアスファルト舗装に影響を与えないような接合形式にし、この接合形式の疲労強度を実験的に確認しました。さらに、実用可能かどうかは別にしてデッキプレートを貫通するタイプの継手も製作し、この継手の疲労強度も確認しました。


 ――実橋への適用は

 鈴木 関西大学の坂野教授が実橋の鋼床版の補修に試験的に適用を試みられています。

 今後は、鋼床版以外のどんな部位の補修に用いるかをもう少し具体的に想定し、詳細な実験を行っていく必要があるように思います。すぐに実用化できるものではないので。


TRねじ φ25mmの径がほしい
 
適正な締め付けトルクの範囲を決めたい

 ――実用的なTRねじの径は

 鈴木 TRねじについては最低でもφ20mm、できればφ25mmまでのものが欲しいと思っています。ただ、ねじ径が大きくなると、ねじを締めつけるインパクトレンチの容量も大きいものが必要になりますし、それに伴ってハンドリングも大変になりますが。

 また、既存のボルトを取り除いて代わりにTRねじを適用しようとすると、M22の高力ボルトが使われていた場合、高力ボルト摩擦接合であれば孔径は24.5mmあるわけです。そうするとφ25mmのTRねじが必要になります。

 新たに孔をあけるようなケースではこうしたことを考えることはないと思うので、小径のTRねじを使った設計、施工を考えればいいと思います。それでもやはりφ20mm、φ22mmくらいは欲しいですね。


 ――TRねじについて取り組まれている課題は?

 鈴木 まずはTRねじの適正な締め付けトルクの範囲を決めようと思っています。多くの現場で必ず聞かれることと思います。車のタイヤを締め付けるとき「締めすぎないように」と注意書きがあるように、TRねじも締めすぎに注意しなければなりません。

 まだ容量、大きさ、重量などの詳しいことは確認していませんが、トルクをコントロールできるインパクトレンチがあると聞いています。建設業界の需要が増えれば適用機種も増えるかもしれませんね。

 もう一つは、ねじが斜めに入った時の許容値。TRねじ継手の上板と下板の孔径は、共孔の場合もありますが、一般には上板の孔径が(ねじ径+1.0mm)の過大孔、下板の口径が(ねじ径-0.5mm)となっています。いずれの孔もキリであけただけですから、側面は雌ねじが切られていないツルツルの状態です。そこにTRねじが入れられる。ボルトとナットのように雄ねじと雌ねじが対応していれば雄ねじが斜めに入っていくこともないでしょうけど、TRねじの場合、TRねじが下板に雌ねじを成形しながら進んでいくので、斜めに入ろうとまっすぐ入ろうと関係なしにねじは部材に入っていきます。そうするとまっすぐ入らないこともあるわけです。それをどこまで許すのか? という話です。

 引張接合継手の場合については、昨年実験をしてある成果を得ています。TRねじを故意に斜めに入れた試験片と真直ぐに入っている試験片の強度がどの程度違うかということを調べました。そうすると、ねじのフランジの一部が上板についた状態で、ねじのフランジと上板の隙間の最大値が2mm位までだったら、その継手の強度はねじが真直ぐに入った5体の試験片の強度のバラツキの範囲内に収まっていることが分かりました。しかし、この隙間が2.5mm以上あると、TRねじが真直ぐ入った5体の試験片の強度のバラツキの最小値よりも下がることが分かりました。数少ない試験片の結果ですが。

 高力ボルトの場合、締付けに失敗するということがあるのかどうかよく知りませんが、たとえ失敗したとしても継手を構成する鋼部材を傷つけることはないと思いますので、ボルトを交換して再度締め付けるといった対応が可能でしょう。TRねじの場合、ねじは下板にねじを切って接合するので、ボルトのようなわけにはいきません。継手を構成する鋼部材を傷つけてしまいますので、そう簡単な話ではありません。ダメもとで、先ほどお話しした引張接合継手の実験で作製した、TRねじが斜めに入った試験片を使って、一度ねじを抜いて新しいねじで、再度締付けたところ、ねじのフランジと上板の隙間の最大値が 2.5mm以上あった隙間を0.5mm以内に修正できた試験片の強度は、ねじが真直ぐに入った5体の試験片の強度のバラツキの範囲内に収まったという実験結果を得ました。今年は重ね継手の場合について調べることにしています。

 ――施工の際にTRねじが斜めに入らないガイドのようなものはないのですか

 鈴木 ありますが、施工の際に微妙に動いてしまうようです。昨年、学生がこのガイドを使って締付けたところなかなか思うように使いこなすことができなかったと言っていました。

 ――ありがとうございました
(2018年8月7日掲載)