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インタビュー詳細

鋼部材の疲労・防食 塩害対策も待ったなし

NEXCO中日本東京支社 大規模更新・長大橋耐震補強をいかにスムーズに進めるか

中日本高速道路株式会社
東京支社
保全・サービス事業部長
関谷 富彦 氏

 中日本高速道路東京支社は、東名、新東名などで1433橋の橋梁・高架橋(総延長328km)と119チューブのトンネル(同131km)を管理している。40年以上経過している橋梁は50%を超えており、来年の東名高速道路開通50周年により、その殆どが50年超に移行する。特殊・長大橋の数も40橋と多く、大規模更新や大規模修繕、長大・特殊橋の耐震補強、ロッキングピアの耐震補強など対応しなければいけないことがたくさんある。関谷富彦保全・サービス事業部長にその詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

1433橋328kmの橋梁を管理

 東名・新東名で8割を超える

 ――現在の管内における構造物の状況について

 関谷部長 東京支社では1433橋、全長328kmの橋梁を管理しています。

40年以上経過している橋梁が50%を超えています。路線としては東名が来年には開通50周年を迎えるので、50年を迎える橋梁がたくさん出てきます。路線別橋梁数では、東名が52%。新東名が29%となっており、東名と新東名をあわせて8割を超えます。東京支社の仕事のほとんどは、交通量を含めて東名、新東名が占めています。その他の路線は割合としては小さくなっています。

管内橋梁概要


 ――橋種別では

 関谷 橋種別橋梁延長でみると、鋼橋が47%と突出しています。

 ――延長別では

 関谷 新東名は橋長が長い橋梁が多いので、路線別橋梁延長では新東名が40%を占めています。新東名は構造物比率そのものも高くなっています。


119チューブ131kmを管理

 東名は矢板工法が多い

 ――トンネルは

 関谷 東京支社では119チューブ、131kmを管理しています。

 40年以上経過しているトンネルは24%で、東名はそのうち70%を占めています。工法別では、NATMが82%、矢板工法が17%。トンネル延長は131kmで、新東名が69%を占めます。工法ではNATMが多くなっていますが、東名は矢板工法により施工されたトンネルが多く、老朽化が進んでいます。

管内トンネル概要

 ――橋長別とトンネル延長別は

 関谷 橋長50m以上の長大橋が74%、トンネルでは延長1km以上が36%を占めます。

橋長別割合/トンネル延長別割合


東名と小田原厚木道路は変状グレードⅢ、Ⅳが見られる

 東名は疲労、小田原厚木道路は塩害など

 ――点検を進めてみての損傷状況は。東名の経年劣化状況について名古屋支社では疲労と床版の損傷が各地で出てきていると話を聞きました。対傾構やリブなどのメタルの疲労、コンクリートの床版防水をしていなかったことによる疲労と水、塩の複合劣化が進んできているとも聞いています

 関谷 東名と小田原厚木道路については、NEXCOの健全度評価における変状グレードのⅢとⅣが見られています。特に東名は大型車の交通が多く、その影響によりRC床版の疲労損傷が出てきており、健全度の状況が悪い橋梁から、高速道路リニューアルプロジェクトにおいて床版取替を計画的に実施しています。床版以外の損傷では、溶接部の応力集中による疲労き裂が発生しています。支承が可動不良になり、ソールプレートに疲労き裂が発生し、それが下フランジに影響を与え、ウェブまでつながる可能性があるき裂も発生しています。そのような損傷に対しては、応急対策としてストップホールと当板補強を行っています。恒久対策として支承をサンドルやベントで仮受けして、可動不良の鋼製支承を取替える工事を行っています。

鋼部材が疲労により亀裂している事例

 海岸線に近い西湘バイパスでは、飛来塩分による塩害が発生しています。鋼材が腐食して剥落している個所もあります。滄浪橋では、電気化学的に脱塩する工法の塩害対策を実施し、さらにPC桁の外ケーブル補強も行います。連数が多く、今回対策工を行うのは一部なので、今後も着実に進めていきたいと考えています。現在は契約した状況で、工事着手はこれからです。受注者はオリエンタル白石㈱です。


西湘バイパスの橋梁損傷状況

 ――脱塩のNEXCOでの実施例は。あまり聞いたことがありませんが

 関谷 あまり例がないと思います。今回の結果を検証して全線に拡大していく予定です。

 ――変状部位別の割合は

 関谷 橋梁では上部工が全体の46%で、次いで伸縮装置が31%と多くなっています。トンネルは覆工が86%を占めます。

変状区分がA判定以上の部位別割合

 ――下部工の損傷は

 関谷 現状では目立った損傷はありません。

 ――東名の冬季の凍結防止剤散布量は

 関谷 凍結防止剤散布量が一番多いのは御殿場ですが、東京支社管内6事務所あわせても年平均1500t程度であり、金沢支社や名古屋支社の高山及び彦根の重雪氷地域にある事務所で使用する凍結防止剤の1事務所分にも満たない量です。そのため、凍結防止剤の橋梁への影響は他の路線と比較すると少ないといえます。



東名海老名付近は15万台の交通量

 既設床版の防水工未設置の影響は多大

 ――東名の交通台数と大型車混入率は

 関谷 一番多いのは海老名付近で日あたり15万台であり、NEXCO中日本で一番の交通量を誇ります。大型車混入率は約30%です。静岡県内に入ると新東名とのダブルネットワークになっていますので、現在は日あたり約10万台のうち、新東名が6割、東名が4割となっています。ただ、平成24年に新東名ができるまでは東名1本だったので、約10万台の交通量が集中していました。

海老名付近では1日あたり15万台の交通量に達する

 ――床版防水工をしていなかったことによる影響は

 関谷 その影響は大きいと思います。現在、床版取替工事を行っている橋梁は建設時に床版防水工をしていなかった橋梁です。床版上面のひび割れから水が入っての鉄筋腐食が発生している、もしくは繰り返し荷重で床版の土砂化が進んでいます。

床版の損傷状況

上面が部分的に土砂化した床版


トンネル 東名と小田原厚木道路で変状グレードⅡ、Ⅲ

 ロッキングピア補強対象は32橋、全て東名 

 ――トンネルについては

 関谷 東名と小田原厚木道路でNEXCOの健全度評価における変状グレードⅡ、Ⅲが出ている状況です。東名は矢板工法により施工されたTNが多いです。矢板工法は、NATMと比べて打ち継目が多く、打ち継目からの漏水が顕著に発生しており、漏水防止の樋を設置している状況です。小田原厚木道路も同じような状況です。

東名 興津トンネルの変状

 ――矢板工法の場合、道路軸方向の内空断面の影響による道路軸方向のひび割れが発生するとかなりナイーブになると言われていますが、そのような損傷はありますか

 関谷 いまのところ確認していません。

 ――耐震補強の進捗状況をまず、東京支社管内のロッキングピア数から教えてください

 関谷 東京支社管内には34橋あり、全てが東名高速道路にあります。内訳は本線・ランプ橋16橋と跨道橋18橋です。撤去する橋はなく、全て補強します。

 ――補強の仕方は

 関谷 コンクリート巻き立て(ラーメン化)もしくはブレース(横つなぎ斜材)で補強を計画しています。

 ――西大竹橋(図参照)は斜橋で大変ですね

 関谷 現在、契約手続き中で、受注者が決まらなくて苦労しています。

西大竹橋の耐震補強 斜角を伴う

 ――32橋は基本的にラーメン化をするのですか

 関谷 ブレース材での補強もあります。どちらが合理的にできるか、設計し判断していきます。

 ――ブレース材で補強する鳥坂橋の場合は、下だけ巻き立てで沓をなくして、横はブレーズ材で剛結して、上は沓を残す形ですか

 関谷 そうです。

鋼製ブレース材で補強する鳥坂橋

 ――場所によっては基礎の補強をともなわなければならない橋が出てくると思いますが

 関谷 検討はしましたが、時間的に難しいですね。殆どが東名本線のなかにピアがあり、現実的には基礎を補強するのは難しいため、ブレース補強で基礎の補強が不要となるようにしています。

 ――発注方法は

 関谷 名古屋支社が行っているような基本契約方式は採用しておらず、事務所単位で発注しています。32橋すべて発注公告は終えています。10万台以上走っている東名の中分でコンクリートを打設したり、ブレースを設置する工事なので、なかなか受注してくれる業者がありません。危険が無いように規制については、グループ会社を含めて努力していますが、なかなか受注してくれる会社がいない状況です。