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インタビュー詳細

大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、大規模更新・大規模修繕など

阪神高速道路 新設・保全を考慮した技術開発動向

阪神高速道路株式会社
技術部長
加賀山 泰一 氏

 阪神高速道路は、グループビジョン2030のもと、これまで以上に高い目標をかかげて、技術開発に挑戦していこうという大きな方針のもとで、大阪湾岸道路西伸部や淀川左岸線延伸部、大規模更新・大規模修繕などの事業に対応するために、様々な技術革新にいそしんでいる。今年度からは研究開発の検討体制をプロジェクト制に移行し、さらなる開発業務の効率化を図っている。その具体的内容や成果について、同社の加賀山泰一技術部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


研究開発の検討体制をプロジェクト制に変更

 AIを積極的に活用

 ――まず、阪神高速道路の技術開発の基本方針から教えてください

 加賀山部長 阪神高速グループビジョン2030でいくつかのチャレンジ項目を示しました。特に、「最高の安全と安心を提供する阪神高速」や「世界水準の卓越した都市高速道路技術で発展する阪神高速」というキーワードに示されている通り、これまで以上に高い目標をかかげて、技術開発に挑戦していこうということが大きな方針です。


従前の体制/プロジェクト制に再編成( )内は実施共同研究数

(阪神高速道路提供、以下注釈無きは同)

 さしあたって、昨年度から研究開発の検討体制をプロジェクト制に変更しました。各部署で担当する技術開発の内容を、会社としてしっかりとマネジメントしていくため、技術開発に関する戦略会議を設け、抜けている技術開発項目や研究の重複を解消し、将来の目標を明確にして個別の開発業務に向かっていこうということでスタートしたのが、昨年度からの「研究技術開発戦略」です。

 特に、AIを積極的に活用すべく、各事業分野のマッピングを行い(別掲図表参照)、どの分野にAI技術が活用できるかを検討しています。


AIを積極的に活用

 当社では今までAIをトンネルや舗装のひび割れの評価などの構造物点検分野や、障害アラートおよび車種判別などのお客様サービス向上分野を対象に検討していました。これを会社運営の効率化など従来使っていない分野にも活用していくことを考えています。

 また、共同研究の実績としては、平成29年度で52件実施しており。3年前から始めたコミュニケーション型共同研究についても、阪神高速グループの技術研究発表会などで相談会を実施するなど、新たな共同研究の仕組みを取り入れ引き続き進めていく予定です。


共同研究の実施状況


共同研究実施例


大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部へ新技術

 UFC床版、鋼管集成橋脚など

 ――大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部は合併施行が決まりました。大阪湾岸道路西伸部を担当する部署として神戸建設事務所を立ち上げて設計に入っていると思いますが、そこでどのような技術を開発して、投入しようとしているのか教えてください

 加賀山 個別要素技術では以前より取り組んでいるUFC床版、鋼管集成橋脚があります。UFC床版は平板型とワッフル型の2種類があります。平板型を今年度、ランプの床版取替工事において試験施工を実施予定です。ワッフル型は西船場JCT関連の入路で適用できるかどうか検討中です。


UFC床版


 ――UFC床版は非常に軽いことと、耐久性も高いという点に特徴がありますが、大阪湾岸道路西伸部に使うメリットは。普通であれば、長大橋も含めて鋼床版を架けるか、陸上部であればRC・PC床版となると思いますが、UFC床版を大阪湾岸道路西伸部のどのようなところに使うメリットがあると考えていますか

 加賀山 UFC床版を採用することで、鋼床版並みの死荷重、重量となることで、鋼床版に代わる床版になります。鋼床版は疲労き裂の問題もあり、対応に苦慮しており、それに代わり得る有力な床版のひとつです。長大橋にとっては、RC床版は重量が欠点となりますが、それを解消できる床版としても注目しています。


UFC床版はRC床版に比べ大幅に軽量化できる


試製作した平板型UFC床版


 ――コストも鋼床版並みですか

 加賀山 一定のボリュームで採用しないとコスト面のメリットは出てきません。それと、舗装を含めたトータルコストをどのように縮減できるかにもよります。鋼床版で使われてきた基層部のグースアスファルト及び基層部を通常の舗装に代えることでコストを抑える手法も検討しています。舗装まで含めたトータルコストを考える必要があります。

 ――鋼管集成橋脚は西船場JCTでは制震橋脚として使われました。常時は上部工の荷重を支持していませんが、地震が起きた際に初めて上部工が橋脚に地震時水平力を伝達し、損傷を制御することで橋全体の被害を防ぐ構造として活用されました。大阪湾岸道路西伸部でも同じような使い方をするのですか

 加賀山 鋼管集成橋脚は、淀川左岸線の海老江JCTでも1箇所採用していますが、通常の機能として使用しています。一般的な連続高架橋において従来の橋脚と比べてメリットが出るかどうかを検討しています。特に、地震時の応答が通常の橋脚並みに耐震性が確保できるか見定めています。


鋼管集成橋脚の研究


 ――西伸部では使うことを前提として設計に入るのですか

 加賀山 まだ詳細設計の段階ではなく、さまざまなタイプの比較設計の段階ですから、一つの候補として提案できるのではと考えています。


信濃橋渡り線の鋼管集成橋脚構造図 フーチングのない杭基礎一体型の基礎が特長/実物の写真

 ――鋼管集成橋脚を使う場合、一つだけわからない点があります。レベル2地震に対応できるのはわかるのですが、地震が起きたときに目視では破壊が起きていないが、実際どの程度のダメージが制震部材に蓄積しているのかということが定量的に把握できるのでしょうか

 加賀山 制震部材の損傷蓄積を定量的に把握することは難しく、残留変形の有無で判断するしかないと思います。せん断パネル部を取り出し、繰り返し載荷試験によりエネルギー吸収の度合いを明らかにし、実験結果をFEM解析での再現を可能にしようとしており、その損傷状況とエネルギーの吸収状態をある程度推測することで判断することになると思います。

 ――現在は実験を行っていく段階ですね。海老江JCTでの基礎構造は?

 加賀山 ケーソン基礎です。一方で西船場JCTはフーチングレス橋脚を採用しています。ひとまわり口径の大きい鋼管杭を打ち込み、その上にソケット状に填めこむというイメージです。そうすることで、フーチングレス化が可能となり、非常に合理的な設計が可能となりました。ただ、大阪湾岸道路西伸部では、本数や配置も含めさまざまなパターンでの検討が必要になると思います。

 ――大阪湾岸道路西伸部の場合は基礎がとても深いと聞いており、基礎より上の構造はできるだけ軽くしたいという話があります。一方で基礎が少ない本数の杭でいけるのか、判断が難しいですね

 加賀山 地震時は、どうしても柱や杭側にも力が集中します。このフーチングレスにした橋脚は全体にしなるため、スムーズな設計が可能だが、少ない本数の杭でいけるかについては、これからの課題です。

 ――フーチングレス橋脚化はできそうですか

 加賀山 連続高架橋でも桁下クリアランスなど様々な条件があり、適材適所でその適用性を提案していくことになろうかと思います。

 ――確かにそれだけフーチングを減らせれば、基礎に対する影響も最小限にできますよね

 加賀山 5号湾岸線では基礎杭は20本くらい必要でしたから。

 ――上部工も重かったのではないですか

 加賀山 橋脚高が低いところはRC床版を使っています。それを先ほどのUFC床版を使っていくかどうかです。構造全体としてのトータルコストがどの程度縮減できるかを検討する必要があります。

 ――鋼管集成橋脚ではない箇所もRC橋脚というよりは、概ね門型の鋼製橋脚という形で、橋脚もメタルでいく形ですか

 加賀山 一概には言えません。5号湾岸線は6車線なので幅員が広く、1本の脚(T型)で支えるのは限界がありましたが、大阪の南側4号湾岸線は4車線で、T型でも十分経済的に設計できました。ここも同じく6車線であり、柱を立てる中央分離帯のスペースが十分確保できていれば状況も変わってくると思われます。

 ――結局は基礎をどう考えるかですね。そのために上の床版をできるだけ軽くするためにUFCを使うということですね

 加賀山 阪神淡路大震災前は一般的な橋梁は単品で設計している感じでした。それでも設計は合理的にできていた。いまは全体の地震力の分散などを考えると、構造全体を一体で解析する必要があり、トータルで設計する必要性が昔以上に生じています。


海中の長大橋基礎構造についてもより合理的な設計をできないか

 ――UFC、鋼管集成橋脚以外の技術は

 加賀山 海中の長大橋基礎は鋼管矢板基礎を想定していますが、止水性を保つためのジョイント部を鋼管全長に渡って設置していましたが、遮水層から下は鋼管だけでいいのではないか、など。さらに、鋼管自体も基礎として支持力さえ確保できたら本数を間引くことができるのではないかなど、基礎構造についてもより合理的な設計をできないかということも課題として認識しています。


長大橋基礎構造に関する技術的検討


 ――その場合、水は大丈夫ですか

 加賀山 もちろん、止水位置はチェックしなければなりません。

 ――あそこはどれくらいの基礎に

 加賀山 深いところでは水面から70m近い深さになります。

 ――東北地方整備局で見た気仙沼湾横断橋の場合は、仮設支持梁の形状も工夫していました。トラス構造にして橋脚のところに支持梁が貫かないようにする形式。抜いて埋めてを繰り返すとそこが損傷するので、それをやらないように仮設支持梁そのものを橋脚に干渉しないようなもので橋脚の健全度を保つことを行っていました。

 加賀山 これは、従来の長大橋の基礎の施工方法を踏襲するのではなく、合理性を持った構造にしないといけないという意識を持った設計の一例ですね。


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冨士精密 ゆるみ止めナットを始めて半世紀 U-NUTなど橋梁・土木分野含め堅調に推移