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橋梁長寿命化修繕計画は268橋が対象で22橋の修繕工事完了

さいたま市 国道463号バイパス(鶴巻ランプ)などを整備

さいたま市 建設局
土木部長

小島 正男

公開日:2017.10.16

長寿命化修繕計画による補修を過去3年間で21橋着手
 今年度は7橋の着手を予定

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と、今年度の計画についてお教えください
 小島 橋梁長寿命化修繕計画に基づいて、平成26年度には8橋、平成27年度には7橋、平成28年度には6橋の工事に着手しています。床版取替え工事の実績はなく、断面修復やひび割れ補修後、塗膜系の橋面防水を行い舗装打替え工事を行っています。
 今年度は、国道463号に架かる鶴巻陸橋や市道F195号線に架かる南浦和陸橋を含め、7橋の工事着手を予定しています。鶴巻陸橋は、東北自動車道を跨ぐ橋梁で、供用開始から40年近く経過しており、損傷がひどく、断面修復、ひび割れ補修、はく落対策、支承および伸縮装置部材の補修などを行います。
 また南浦和陸橋につきましては、橋面防水、舗装の打替え、伸縮装置の取替えなどを行います。
 ――床版防水の施工状況は
 小島 コンクリート既設床版の防水として、基本的に塗膜系防水(アスファルト加熱型)を採用しています。不陸や障害物への対応が容易であり、ブリスタリングの発生も少ないことが採用の理由となります。今後は、高い耐久性と補修効果を得られる高機能型の防水工法も採用してきたいと考えています。
 ――床版の損傷が目立った橋梁はありますでしょうか
 小島 平成27年度に耐震補強と補修工事に着手した一級河川荒川を渡河する国道463号羽根倉橋(上り線)において、舗装の打替え工事を実施しましたところ、床版上面に多数の土砂化が確認され、想定以上に床版の損傷度合が悪かったため、今年度の補修・補強工事を中断し、現在、床版補強の検討業務をしています。


羽根倉橋側面と橋面

羽根倉橋 橋梁一般図

 ――羽根倉橋(上り線)の橋梁構造と交通量を教えてください
 小島 橋長859.63m、車道部有効幅員7.5mの2径間連続鋼鈑桁+3径間連続鈑桁橋×2+2径間連続鋼箱桁+3径間連続鋼箱桁×2となります。床版はRC床版で、これまで増厚は行っていません。交通量は、平成22年度段階で29,823台/日(大型車混入率約22%)です。
 ――床版上面の土砂化のほかに損傷は
 小島 主桁部や支承部の防食機能の劣化、床版部のひび割れ、剥離・鉄筋露出、伸縮装置部の漏水などが確認されています。
 ――支承と伸縮装置の取替えについて今度の施工予定は
 小島 支承の取替え予定はありません。伸縮装置は4橋25ジョイントの取り替えを予定しています。市道F195号線に架かる南浦和陸橋で12ジョイント、国道463号に架かる鶴巻陸橋で8ジョイント、市道20305号線に架かる山口橋で3ジョイント、主要地方道さいたま春日部線に架かる簀子橋で2ジョイントです。南浦和陸橋は、ゴムジョイントから鋼製に、そのほかはゴムジョイント同士の交換となります。
 ――ノージョイント化の採用は
 小島 見沼代用水西縁に架かる本郷橋で、走行性に優れている、複雑な移動・変形に追従できる、施工が容易で安価な理由から、埋設型ジョイントへの取替えを予定しています。
 ――塩害やアルカリ骨材反応(ASR)による損傷は発生していますでしょうか
 小島 内陸であり、降雪が少なく融雪剤散布も非常に少ないため、塩害による損傷は発生していません。またASRについては、平成26年度の定期点検において、県道上野さいたま線に架かる新開橋で、ASRによる損傷と思われるPC鋼材の方向に沿ったひび割れが確認され、詳細調査の結果ASRの影響を受けていることがわかり、対策を実施しました。

鉛やPCBの塗膜除去は湿式で対応

 ――鋼橋塗替えの昨年度実績と今年度の予定は
 小島 昨年度は、主要地方道さいたまふじみ野所沢線びん沼高架橋で2,240㎡や北原陸橋5,020㎡、羽根倉橋2,470㎡など、4橋9,840㎡の塗替えを実施しました。今年度は、加田屋川に架かるねじ橋で510㎡を予定しています。




びん沼高架橋の塗替え工(左が施工前、右が施工後)/(下)はく離作業1回目

 ――鉛やPCBなど有害物を含む既存塗膜処理での対策は
 小島 有害物質については、補修設計時に含有量試験と溶出試験を実施して確認を行っています。既存塗膜の除去は、損傷の程度や施工条件などにより方法を決定していますが、鉛やPCBの混入が確認された場合は、湿式工法を採用しています。
 ――錆による劣化損傷事例が最近増えてきている耐候性鋼材を使用した橋梁は
 小島 該当する橋梁はありません。
 ――のり面や斜面の維持管理対策は
 小島 平坦な市域であるため、崖地はほとんどありません。平成26年の広島豪雨災害後に16箇所を土砂災害(特別)警戒区域として指定しましたが、それまでは土砂災害警戒区域はありませんでした。過去に大きな土砂災害が発生したことはなく、16箇所についてもすべて小規模斜面であり、擁壁となっている箇所も指定されています。定期点検や日常的なパトロールで、安全確保に努めております。

自主財源確保のため、歩道橋ネーミングライツ事業を展開

 ――新技術・新材料の採用をはじめ、市としての取り組みがありましたらお教えください
 小島 NETISに登録された新技術の活用は行っていますが、独自の新技術・新材料の開発に積極的な取り組みは行っていません。ただ、限られた人員と予算のなかで、今後急激に増加する老朽化した道路ストックの適切な維持管理は課題となっています。そのなかで、ドローンや自走式ロボットを用いた橋梁点検技術や、無線方式で振動やたわみなどのデータを収集する常時モニタリングシステムなどの技術が開発されていますので、他都県市の動向をみながら、新技術の活用を検討していきたいと考えています。
 また、歩道橋の自主財源を確保するため、平成27年度から歩道橋に通称名を命名できる権利を売却し、その収入を歩道橋の維持管理に充てる歩道橋ネーミングライツ事業を開始しました。平成29年7月末までに、対象42橋のうち16橋のパートナー契約を締結しており、今後も新規と継続的なパートナー契約に向け、事業を推進していきたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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