道路構造物ジャーナルNET

2017年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥日立造船

工場操業度維持が大前提 既存事業の高収益化を図る

日立造船株式会社
執行役員
社会インフラ事業本部長

嶋 宗和

公開日:2017.09.22

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業の一つと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第4回目は、日立造船の嶋宗和執行役員と日本鉄塔工業の有田陽一社長の記事を掲載する。

 ――前年度(16年度)の業績をお願いします
 嶋 昨年度は受注高が332億円、売上高が292億円と一昨年度を上回ることはできなかったが、営業利益は10億円と増加した。増加の要因は、埋立護岸に利用される鋼板セルの大型案件の売り上げが大きく寄与するとともに、ネックとなっていた不採算工事が一掃されたことも大きい。2年連続の黒字化を実現でき、ひと安心している。
 ――17年度の目標は
 嶋 今年度は受注高が350億円、売上高が300億円、営業利益が10億円を目標としている。
 インフラ事業部門では、鉄構事業である橋梁、煙突、水門、フラップゲート、海洋構造物とシールド事業から構成されている。尾道市の向島工場、堺市の堺工場の生産拠点を持ち、2工場の操業度を維持すること、『工場を守る』を大前提として、企業活動を展開している。
 新設橋梁では今後の需要は増えず、大規模更新工事、耐震補強工事の増加が予想される。ファブにとっては、工場稼働率が上がらないことからネックとなるが、当社では他機種を含めたプロダクトミックスを進めていく。平成28年度土木学会賞の田中賞を受賞した「片品川橋」のような大規模補強工事などの受注を積極的に展開していきたい。
 水門では、メーカーが限られているなか、新設後の点検、メンテナンス作業が更新工事につながることが多いことから、独自技術を活かした営業活動に取り組んでいる。また、既存のダムへの設備増設工事や再開発工事などの改修工事が増えている。ダム再開発工事には浮体式仮締切工法が採用されて成果を上げた。今後の適用拡大に向けて営業展開していく。
 海洋構造物では東京湾での新設岸壁整備や全国の拠点港湾の再整備に向けた耐震補強、リニューアル工事が増えつつあり、鋼板セル、ケーソン、ジャケットや沈埋函などの需要が増加しており、これらの受注を目指していく。
 煙突では、既存煙突の耐震補強工事が増加しており、これらにも対応していく。
 このほか、洋上風力発電設備の構造物、シールド掘進機や鋼製セグメントの製作も実施していく。


片品川橋

 ――防災分野については
 嶋 第18回国土技術開発賞優秀賞を受賞したフラップゲート式陸閘「neoRiSe(ネオライズ)」は自然の力を最大限に利用し、津波・高潮による施設の浸水被害を防止する。昨年末で80件を超える施工実績を上げている。最近の浸水被害の増加に比例して、建築分野の設計段階での引き合いが急増している。水をコントロールすることでは水門も同様の機能を持っていることから、水門とフラップゲートの2種類を選択できる営業も展開している。
 ――設備投資については
 嶋 堺工場では、橋梁や海洋大型構造物を想定した重防食塗装も可能な塗装工場を新設した。向島工場では、橋梁仮組立用や搬出用のタワー型クレーンを更新した。また、総合事務所の建て替え工事を実施中で、今年度中に完成する。
 ――海外事業については
 嶋 今後の国内市場をみるかぎり、海外市場を視野に入れた展開を考えなければならない。具体的には東南アジアを中心にODA案件を視野に推進していく。水門関連では、ラオスで初受注した水門・鉄管工事で、海外初となる既設ダムに仮締切工法を採用する。
 ――そのほかには
 嶋 全社として「2030年事業ビジョン」を策定した。具体的な推進に向けた3カ年計画では国内の既存事業での収益を上げる高収益化を図ること、海外事業展開に向けた基盤整備を行うこととしており、次のステップへの足元を固めることにも注力していく。(聞き手・佐藤岳彦 文中・敬称略)

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