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インタビュー詳細

2775橋を管理。LCCも考慮した長期的な視野での保全に取り組む

埼玉県 上武大橋などの架け替え事業を進める

埼玉県
県土整備部長
西成 秀幸 氏

小仙波橋で床版取替え工事を今年度に実施

 プレキャスト合成床版を採用予定

 ――上部工補修・補強の状況は

 西成 主桁ではく落やひび割れ、塗装の劣化が発生している箇所では、断面修復やひび割れ修復、再塗装を実施しています。修復工法では、エポキシ樹脂やポリマーセメントモルタル、無収縮モルタルなど現場条件に応じた材料を採用していますし、再塗装ではフッ素系の樹脂や塗料、錆転換型防食塗装ではアースコートやエポガードシステムを採用しています。



東松山鴻巣線・鴻中陸橋 上部工補修(左が施工前、右が施工後)


 床版もはく落、ひび割れ、漏水が損傷の主な要因となっていますので、断面修復や床版防水を行っています。床版防水では、現場条件に応じてシート系、塗膜系による防水と舗装による修繕、対策を実施しています。

 国道254号・小仙波橋(橋長333.0m、幅員10.5m、鋼単純鈑桁+鋼3径間連続箱桁+鋼4径間連続鈑桁)では今年度、床版取替え工を実施する予定です。床版設計では、プレキャスト合成床版(ショーボンドが開発したスーパー床版)を取り入れています。



小仙波橋全景


小仙波橋 橋梁一般図


 ――塩害やアルカリ骨材反応などによる劣化は発生していますでしょうか

 西成 塩害による劣化はとくにありません。山間地では凍結防止剤を撒きますが、豪雪地帯ではないので散布量は多くなく、影響はほとんど出ていません。アル骨反応による劣化での補修事例も近年ではありません。

 ――支承や伸縮装置の取替えの予定と、ノージョイント化についてお教えください

 西成 今年度の施工予定箇所数は、支承補修が8箇所、伸縮装置補修が9箇所です。ノージョイント化はこれまで実績がなく、今年度も予定はありません。

 ――昨年度の鋼橋塗替え実績と今年度の予定は

 西成 平成28年度は主要地方道川越栗橋線の釘無橋取付高架橋(920㎡)ほか、21橋で総面積約24,000㎡を実施しました。平成29年度は主要地方道さいたま東村山線の秋ケ瀬橋(4,000㎡)ほか、31橋で40,000㎡の予定です。ケレンについては、鋼道路橋防食便覧に基づき工法を選定して実施しています。



釘無橋取付高架橋の塗替え工(左が施工前、右が施工後)


 ――PCB、鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理はどのようにされていますでしょうか

 西成 事前に有害物質の使用状況を把握するために含有量調査を実施しています。有害物質の含有が確認された場合には、原則湿式による作業を実施するなど、鉛中毒予防規則等の関係法令を順守しています。

 ――耐候性鋼材の採用については

 西成 1980年代から現在まで34橋で採用しています。一部の橋梁で桁端部に悪性錆が発生している箇所がありますが、現段階での点検結果から経過観察のみとしています。


新製品・新技術のマッチングモデル事業を展開

 ――新技術の採用・コスト縮減への取り組みがありましたらお教えください

 西成 コスト縮減ではこれまで何年後に何%縮減するという取り組みをしてきましたが、一定の成果をあげたため、現在は日常の取り組みとして行っていて、特別なことはしていません。

 新技術の採用とは少し違いますが、県産品の利用促進という埼玉県の大きな取り組みのなかで、県内企業が関係する新製品や新技術を発掘するマッチングモデル事業を実施しています。発注者(埼玉県)提案型モデルと応募者(企業)提案型モデルの2種類があって、応募された新製品・新技術の内容を第三者機関の評価委員会が審査、選定後、試験施工を行い、その効果を改めて評価委員会が確認するというものです。新製品・新技術の効果や有効性を県が認定することで、利用拡大につながることを期待しています。平成19年度から実施している発注者提案型モデルでは、これまで48テーマに対して98件の応募があり、29件の効果を確認しました。平成24年度からの応募者提案型モデルでは、13件の応募があり、13件を選定し、5件の効果を確認しています。

 具体的な事例としては、平成28年度の発注者提案型モデル事業で、既設道路橋の床版上部の劣化状況についての効果的な調査方法として、ニチレキの非破壊調査システム(床版キャッチャー)が選定されています。今後、現場で実際に効果を検証して、その結果を評価委員会で確認します。また、応募者提案型モデル事業では、ゴム支承の耐候性を大幅にアップできるオゾン劣化防止コーティング工法である川金コアテックのK-PRO工法が選定され、効果検証中となっています。



ニチレキの非破壊調査システム(床版キャッチャー)


川金コアテックのK-PRO工法


 ――i-Construction推進への取り組みは

 西成 国がICT土工などで取り組みを始めていますが、埼玉県でも河川土工、道路土工を対象に平成29年4月からICT活用工事の試行を開始して、実施状況や効果を検証していきます。土量を1,000m3以上扱うものは原則すべて対象としていて、発注者指定型と受注者希望型のふたつに区分けして実施します。今年度は、飯能寄居線や矢納浄法寺線の改築工事など19件程度の発注を予定しています。ICT舗装などについても国の動きを見ながら、ICT土工の試行を勘案しつつ検討していきたいと考えています。

 ――橋梁点検でのドローンを活用した実験事例が増えていますが、埼玉県ではいかがでしょうか

 西成 埼玉測量設計業協会と協定を再締結して、災害時にドローンの利用をできるようにしました。点検については、埼玉測量設計業協会のドローンを使用して調査を行う体制はつくりましたが、まだ実験事例はありません。


地域連携で現場見学会や資格取得研修を実施

 発注の平準化に取組み、第一四半期の発注率を増やす

 ――働き方改革、担い手の確保が課題になっていますが、県として取り組んでいることはありますでしょうか

 西成 全国的な課題であると思いますが、建設業就業者が高齢化していて55歳以上の方が3分の1を占めています。一方で、若い入職者が少ないことも業界の方から聞いています。インフラの整備・保全、また災害時の担い手ということで建設業の方の担い手の重要性は高くなっていますので、県でも担い手確保にむけて取り組みを始めているところです。

 地域連携のネットワークとして県と建設産業団体、教育機関などで組織をつくり、入職者の確保や継続して働いてもらえるように、現場見学会やPRイベント、資格取得や指導者育成の研修を行っています。

 また、建設業の方が継続的に工事を行えるように、発注の平準化をはかっています。これまで第一四半期の工事量が非常に少なかったので、前年度から設計の準備をして第一四半期に工事を発注する取り組みを、平成27年度から行っています。その効果で平成26年度第一四半期の発注率は15%程度でしたが、平成28年度は35%に増えてきています。ただ、それでも限界はありますので、債務負担行為やゼロ県債などを活用して、さらなる平準化やゆとりある工期での発注を目指したいと考えています。

 ――ありがとうございました