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2775橋を管理。LCCも考慮した長期的な視野での保全に取り組む

埼玉県 上武大橋などの架け替え事業を進める

埼玉県
県土整備部長

西成 秀幸

公開日:2017.09.25

昭和9年架設の上武大橋、架け替え事業を進める

 ――事業中の橋梁についてお教えください
 西成 群馬県と埼玉県の境を流れる利根川を渡河する県道伊勢崎深谷線・上武大橋の架け替え事業を行っています。中央径間部が鋼トラス形式、側径間部がゲルバー桁形式の現橋は、昭和9年に架設されてから80年以上経過していて老朽化が著しく進んでいます。また、有効幅員が5.5mと狭く、大型車がすれ違いにくくなっていました。そこで、「隣接県との道路ネットワーク強化」を図るため、新橋への架け替えに着手しました。
 事業延長は取付道路を含めて約2kmで、新設橋梁は橋長888m、幅員は11m(車道部6.5m)で片側歩道の鋼13径間連続細幅箱桁橋となります。現在、桁架設が完了し、床版工事を行っていて、今年度末に供用開始予定です。
 ――現橋の損傷状況は
 西成 80年前の設計当時よりも自動車荷重が大きくなっていますので、一部の部材にき裂が発生していたり、利根川の河床低下により橋脚基礎の根入れが浅くなったりしています。なお、平成27年度時点の交通量は9,069台/日(大型車混入率11.9%)で、架け替え後の計画交通量(平成42年度推計)は、15,393台/日(大型車混入率14.0%)となっています。


上武大橋全景。中央が現橋、左側が施工中の新橋、右側が歩行者用側道橋

上武大橋 橋梁一般図

新設橋に県として初めてプレキャストPC床版を採用

 ――新橋施工で特徴的なことがありましたらお教えください
 西成 埼玉県として新設橋に初めてプレキャストPC床版を採用しています。細幅箱桁橋なので、プレキャストPC床版と鋼コンクリート合成床版の経済性や施工性などを比較検討して決定しました。床版架設の工区は埼玉県側と、群馬県側の高水敷と低水路(河川内)の3つに分け、高水敷からはトラッククレーンによる架設、低水路は仮設桟橋などの施工では非出水期に限られるという工期の制約があり、桁上にトラベラークレーンを設置して架設を行いました。埼玉県側工区の施工を先行し、トラッククレーン架設では197枚を20日で架設しました。低水路工区のトラベラークレーン架設では156枚を34日での架設となっています。



床版架設

 新橋完成後、平成30年度からの予定で現橋と歩行者用の側道橋を撤去しますが、河川内での大規模な構造物の撤去となり、施工が困難になることが予想されています。架設年が昭和9年と非常に古く、現在、撤去の詳細設計を行っていますが、構造が不明な部分があり、地盤面以下の構造も実際に掘ってみないとわからない状態です。
 ――橋脚の基礎は
 西成 低水路についてはケーソン基礎(P3~P10)、橋台と高水敷部分は杭基礎(P1/P2/P11/P12)となります。
 ――床版防水は
 西成 車道部はシート系の防水で、歩道部は塗膜系の防水となります。

吉川橋 上部工は仮桟橋からの横取り架設を予定
 新橋 門型ラーメン構造(イージーラーメン橋)を採用

 ――上武大橋以外にも架け替えを行う橋梁はありますでしょうか
 西成 一級河川中川を渡河し、越谷市と吉川市を結ぶ吉川橋と、川口市上青木の一級河川竪川に架かる新橋でも事業を進めています。
 吉川橋は、昭和8年の架設で上武大橋と同様に老朽化が著しく進んでいました。新しい橋は鋼4径間連続非合成箱桁橋で、橋長202m、幅員25m(車道部16m)、両側歩道の4車線となります。平成25年度に仮橋工事に着手し、現在は下部工を施工中です。


吉川橋 橋梁一般図

下部工施工

 上部工は下部工が完成してからの施工となりますが、横取り架設工法を予定しています。河川改修も同時に行っていて橋長が現橋よりも長くなることと、現橋の位置に新しい橋を架けることになるので、現在の交通を確保するために下流側に迂回路の仮橋を設置しています。迂回路上を使用して桁を架設すると迂回路が使用できなくなることや、住宅が近接しており施工ヤードの確保が難しいことから、迂回路と新しい橋の間に架設用の仮桟橋を設置します。仮桟橋上で2径間分の2主桁を地組みして横取りし、さらに2主桁を地組み、横取りして、先に横取りした主桁を横桁で結合します。
 ――新橋はどのような架け替えになるのでしょうか
 西成 橋長が14.6mの新橋も昭和5年の建設と非常に古く、著しく老朽化していました。平成28年度に工事着手しましたが、仮橋を架けられる用地がないため、1車線ごとに交通規制をかけての半断面施工を行っていて、現在は半分が完了しています。
 住宅密集地で施工ヤードに制約があり、また工期短縮、維持管理上でもメリットのあるイージーラーメン橋(門型ラーメン構造)を採用しています。イージーラーメン橋は上下部一体構造の門型ラーメン構造ですので、単純橋に比べれば杭数や下部工のサイズを縮小することができます。また、周辺住宅への影響を最小限にとどめるために、基礎杭の施工では自走式鋼管杭回転圧入工法(ロータリープレス工法)を採用しました。



イージーラーメン橋を採用した新橋

新橋 橋梁一般図

橋脚工事の工期短縮のために斜張式架設工法で仮桟橋を施工

 ――架け替え以外で施工中の橋梁はありますでしょうか
 西成 隣接都県との道路ネットワーク強化のひとつとして整備を進めている越谷流山線の(仮称)三郷流山橋は、千葉県との県境を流れる江戸川を渡河する新設橋梁で、千葉県と共同で事業を行っています。平成17年に開通したつくばエクスプレス沿線の住宅化による新たな交通需要への対応や、(仮称)三郷流山橋の下流側に架かる草加流山線の流山橋の慢性的な渋滞の緩和が主な事業目的です。
 (仮称)三郷流山橋は、橋長445m、幅員11mの鋼7径間連続細幅箱桁橋となります。平成25年度に事業着手して、現在は用地取得中で進捗率は54%となっています(29年6月末現在)。


(仮称)三郷流山橋 橋梁一般図

 下部工事が非出水期に限られるので、工期的に非常に厳しくなることが予測されています。低水路の橋脚は高水敷から仮桟橋と仮設構台を設置して施工しますが、仮設の設置、撤去を含め一般的な施工では7カ月しかない非出水期内に完了できないと考えています。そのため、仮桟橋や仮設構台の設置に斜張式架設工法(LIBRAⅡ)を採用して、架設に要する期間を大幅に短縮して、非出水期内で橋脚1基を立ち上げることを予定しています。下部工の工事着手は来年度以降となる予定です。

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