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インタビュー詳細

ベンチャーからPCに必須な企業の軌跡

エスイー50周年 森元会長インタビュー

代表取締役会長 執行役員会長
エスイーグループCEO
森元 峯夫 氏

呼子大橋が斜材活用のさきがけ

 PC斜張橋の設計・施工を作り上げる

 ――飛躍を遂げたのが創業から7、8年後ですか?

 森元 そうですね。オイルショックの年は売上が対前年比で4割も落ちましたが、それを乗り越えると、新材料・新工法も徐々に使われることが多くなってきました。

 きっかけは呼子大橋への斜張橋ケーブルの採用です。私は設計も担当しました。当初は設計の下請という形で携わっていたのですが、設計中の1982年にストックホルムで国際会議があって、そこで懇意にしていた海外の先生方に資料を見せたところ、試設計をすぐに書いていただけました。それを佐賀県に見せたら、密かに悩んでいた県の方々が飛びつきました。紆余曲折あって元請になり、検討委員会を作ったのですが、みんな鋼橋の斜張橋形式は本四架橋で経験しているものの、PC斜張橋ましてやコンクリート製の主塔は分からない。そこで設計基準から施工管理まで全て私が整理して作り上げました。全部コンクリート製でスパンも250mというのは当時としては画期的でした。そこに当社の斜材も使っていただきました。当社の斜材を使った斜張橋の魁は呼子大橋です。以来、日本のPC斜張橋の7割が当社の斜材を用いています。

 ただ、既存の工場製作型の斜材では限界が来ると思ったので、フランスの先進的な技術を学ぶため技術者を送り込み実習させてもらい、現在の標準である現場組立型の斜材技術を習得しました。これは矢部川大橋を端緒に鷹島肥前大橋など各地で使われています。


矢部川大橋


肥前鷹島大橋


 本当の意味で力が付いたのは阪神・淡路大震災後だと思います。山口工場は震災の3か月前に造りましたが、それが地震後にフル稼働しました。当時工場を造るのに15~16億円くらいかかったのですが、それを数年で回収することができたのは、独創的な技術を持っていたからです。


落橋防止ケーブルが業績拡大に貢献

 PCアンカーも様々な用途に拡大

 ――落橋防止ケーブルなどですね。

 森元 そうです。それがインパクトになって色々な製品・技術をスムーズに開発できるようになりました。


落橋防止装置


 ――御社はPCアンカーも他社に先駆けて事業化しましたね。

 森元 アンカーはフランスでも導入されていましたが、当社のように3重防錆しているとか、ネジで止めるとか、敷き直しができるだとかいう画期的なものはなく、導入後に当社で開発したものです。国内シェアは一次的には約9割に達していたと思います。現在でも約7割強を保っています。このような鍵になる技術があってさらに、ステップバイステップで伸びています。

 現在はダムの嵩上げと耐震補強の他、港湾岸壁の耐震補強にも使われています。特に東日本大震災以来、岩壁の耐震補強へのPCアンカーの需要は飛躍的に増加しています。

 ――PCアンカーの需要は豪雨水害による地滑りや崩落が懸念される道路に面した自然斜面や老朽化した吹付法面などにも有効だと思います。

 森元 日本では地滑りを止めるために対策しなくてはいけない箇所が2万か所以上あると言われています。予算が無いため後手に回るのは仕方ありませんが、災害を少しでも減らすには粛々と対策していく必要があり、需要は途絶えないと考えています。当社もできるだけ参画していきたいと考えています。


ESCONを積極的に展開

 耐久性向上、工期を短縮、LCC縮減

 ――今後、建設投資とりわけ新設事業が減少していくことが予想される中で、どのように事業を展開していきますか?

 森元 今後、建設投資が飛躍的に伸びることは見込めないと思います。もう1つ大きな問題は2025年に日本の平均年齢が51歳になるという超高齢化社会が訪れます。昨年(2016年)は18歳人口が170万人を切り、新生児は100万人を切りました。ものすごい勢いで少子化、人口の減少が進んでいます。18年後は18歳人口が100万人を切るわけです。そうすると何が起こるか? 税収は減少し、高齢者は老後に備えて消費を控えるため内需も減少します。従って生産力も減少していきます。現在は大手企業が海外で一生懸命仕事をして、資本収支で稼いでいるわけですが、これがもっと激しくなると思います。こうした状況下では間違いなく公共投資に割く予算は減少します。従事する人も減少するでしょう。

 こうした状況下で売上を伸ばし、会社を発展させるには、時代に見合った新しい独創的な技術を導入するしかありません。その1つがESCON(超高強度合成繊維補強コンクリー ト)です。

 ――ESCONの特徴は?

 森元 ESCONは、従来のコンクリート構造物の倍に当たる100年の長期耐久性を有し、人手も従来の3割ほどに省人化できます。工期も半分に縮減できます。時代に合った新しい材料・工法であり、新しいシステムであると言えます。国土交通大臣が昨年言われたことを具現化できる材料かと思います。ESCONはRC、PCに次ぐコンクリート第3の革命です。昨年7月にはゼネコンやPCファブリケーターや当社など30社でESCON協会を創設し、同協会内の技術委員会などで一生懸命設計・施工資料の作成に当たっています。

 実構造物についても、九州地方整備局内の橋梁の更新の実施についての検討が進められており、来年度には着工される予定です。今後は30~50mスパンのプレキャストESCON桁を提供していきたいと考えています。昨今は豪雨水害が頻発していますが、ESCONは下部工に負担を与えず早く施工でき、桁高を抑制してクリアランスを高く取ることができます。なおかつ長期耐久性も有します。今後、ESCONを使用した道路橋造りを実現していきたいと考えています。この技術を地方のゼネコンやPC2次製品会社に伝えて技術支援すれば、直ぐにも施工できます。


ESCON受圧板

 もちろん、大スパンの橋も条件によっては桁高を最大で半分に抑制できますから、地震抑制効果もありますし、(上部工軽量化により)コストも軽減できます。そうした分野にも提供していきたいと考えています。

 5年後には30~40億円の売上を見込んでいます。10年後には100億円まで持っていきたいですね。