アルミニウム合金製検査路の項目を新設
FRP製検査路の基準に準じる
――アルミニウム合金製検査路の項目新設は
広瀬 軽量かつ高耐食性の検査路として既にアルミニウム合金製検査路は広く使用されています。それをNEXCOでも取り入れようというものです。
アルミニウム合金性検査路の項目を新設
――設計基準は、鋼製検査路および昨年度に追加したFRP製検査路に準じるものですか
広瀬 そうです。ただし、アルミニウムや鉄など異種金属接触による腐食が懸念されますので、それに対する留意事項も入っています。
――アルミニウム合金製検査路の長所はどのように感じていますか
広瀬 NEXCOではコストおよび性能比較表として下記のような表を作っています。アルミニウム合金製検査路は軽くて交換し易く、腐食もしにくいことからハードな環境下ではFRPに一歩譲りますが、マイルドな環境下には一番適している検査路と考えています。
――既設橋について取替易さは追求しなければいけない点ですね
広瀬 既設についてはFRPやアルミニウム合金製の検査路に取り替えていくのが良いと考えています。施工しやすさはもちろん耐用年数も長いですしね。
――アルミニウム合金製検査路の場合は電食の問題があり、本体構造との継手部にどうしても樹脂など絶縁を噛ませねばなりません。それが先行劣化することも考えられますが、それについては
広瀬 樹脂の先行劣化までは考慮していません。ただ、継手部には鋼製のブラケットを使う場合があります。もちろん緩衝としてプラスチックを噛ませますが、それにしても電食には留意するようにお願いしています。
プレキャスト壁高欄の一体性照査方法を新設
重錘衝突試験など採用
――プレキャスト壁高欄の照査方法について
広瀬 大規模更新事業や、新設事業でも工期短縮を図りたい個所では、プレキャスト壁高欄の実績が増えています。その壁高欄の各種接合方法について、要求性能と照査方法が未制定でした。そのため実車衝突試験で衝突安全性を確認しているフロリダ型の形状を満足させること(形状面での照査)と重錘などを用いた簡易衝突試験により、接合部の一体性の照査を行うこと、を明記しました。基本的に国の防護柵設置基準に拠ったものです。
プレキャスト壁高欄の照査方法
具体的には、クレーンに吊った重錘を緩衝材越しに高欄にぶつけて車両衝突試験と同等のエネルギーになるよう調整した試験を行うことで接合部の安全性を照査するものです。照査項目は下の表のとおりです。種別でSBを28kJにしたのは、道路防護柵設置基準を援用したもので、車が衝突した場合、そのエネルギー280kJの9割が車体に吸収されるとされており、1割分の衝撃度が壁高欄に伝わるものと換算し、数値を設定しました。
壁高欄の性能照査項目は現在2段階にしています。設計荷重相当の力と場所打ち壁高欄の主鉄筋が降伏する荷重相当で衝突させたときにはどういう損傷をするか規定しています。通常の場所打ち壁高欄と同じような損傷をしてくれればよいと考えています。
プレキャスト壁高欄の照査方法②
橋梁基礎の安全性判定を終局点に変更
補強が本当に必要な橋梁を精査できる
――耐震補強設計における基礎の安全性の判定について
広瀬 耐震補強設計における基礎の安全性判定方法を土木研究所の研究成果を引用して定めました。
基礎の安全性の判定について、レベル2地震動に対する限界値を強度保持が可能な点に変更しました。同時にレベル1地震動に対して照査を行う場合は、最大強度点に達しないことを標準にしました。
基礎の安全性の判定
通常、基礎は点検しにくいことや後の補強がしにくいことから、平成8年度の道路橋示方書改訂において、降伏しないように橋脚より強くしないといけない、と明記されました。しかし、それより前の示方書で建設した橋梁は、基礎は小さく、補強後の橋脚よりも相対的に弱くなっています。これをそのまま平成8年以降の示方書に当てはめれば大幅な補強が必要となります。一方で、基礎は建設当初から多少安全側に作られている傾向にあります。一般車両ではなく緊急輸送道路の通行を考慮すれば多少損傷していても通行は見込めます。そこで、今回は降伏を認めて、降伏後もどれぐらいじん性があるか許容塑性率の目安を記載して、降伏に対して何倍の変位ないし曲率を有するか、を明示しました。基礎の耐力をきちんと評価しなおすことで、落橋を招くような基礎の補強が本当に必要な対象橋を大幅に減らすことができます。これらの数値は土木研究所の成果を引用しています。
木山川橋ではフーチングはおろか鋼管杭の上部まで出して検査
非破壊検査方法の充実が必要
――既設橋の基礎の耐力はどのように点検するのですか
広瀬 究極的には掘削して目視するのが一番です。例えば、熊本地震で大きな被害を受けた九州道の木山川橋では、フーチングまでをすべて出して基礎の状態を直接目視などで点検し、杭に損傷がないことを確認しています。もちろん最初は弾性波を使った非破壊検査を行い、ほぼ問題がないことをつかんではいましたが、念を入れたわけです。
復興が進む木山川橋(井手迫瑞樹撮影)
――そこまでやっていたのですか
広瀬 実際にはフーチングが損傷した個所を詳細調査するために掘ったわけです。もちろんその際はフーチングだけではなく、鋼管杭の上部まで露出させました。その上で(杭体に)問題がないことを確認し埋め戻しました。ただ、本当は掘りたくない(苦笑)。だから非破壊検査方法を充実させていくことは重要です。