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インタビュー詳細

大規模更新・大規模修繕関連技術中心に

NEXCO3社の平成29年度基準改定

高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)
道路研究部 橋梁研究室長
広瀬 剛 氏

  NEXCO総研は、今年度も7月1日付で各種要領の改訂を行った。橋梁分野では大規模更新の本格化に配慮してプレキャストPC床版関連の記述を今回も改訂した。その話題を中心に、プレキャストコンクリート壁高欄の性能確認試験方法。また、防食分野では金属系研削材の記述挿入、中上兼用塗料。コンクリート関連では大幅に見直したコンクリート管理基準、エポキシ樹脂塗装鉄筋の品質基準の追加、新しいコンクリート圧縮強度非破壊検査機器の導入。加えて、床版下地の不陸修正方法などについて広瀬剛橋梁研究室長に詳しく論じていただたいた。(井手迫瑞樹)


平成29年7月の主な改訂点(NEXCO総研提供、以後注釈なきは同)


鋼板当て板補強・部材取替工法の記述を新設

 炭素繊維補強材貼り付け工法の規定に準じる

 ――NEXCO3社の橋梁に関する各種基準改定概要についてまず設計要領第二集橋梁保全編から教えてください

 広瀬室長 まず、鋼板当て板補強工法・部材取替え工法について、保全工事では既に当て板補強などを行っていますが、実績などを踏まえて統一事項等を追記しました。

 鋼板当て板補強については、①腐食などによって生じた断面減少部の不陸修正としてエポキシ樹脂系接着剤の仕様を規定化、②当て板補強時の範囲(母材とのラップ幅など)の決定についての記載を行っています。また,構造物施工管理要領については、同工法について新たに設け,材料・施工・品質管理について規定しています。

 部材取替え工も同様です。腐食して断面欠損に至っている個所などは当て板で済まず部材取替工に至る箇所もあり、これも既に現場で施工しています。そうした今までの様々な施工例を反映し、取替時の仮設バイパス材(基本的に供用しながら取替えるが、一時的に断面欠損が生じることを防ぐため、部材取替時は一時撤去箇所の端部同士を仮設バイパス材で繋ぎ、補強する)などについて取替部材の範囲について記載しています。こちらも構造物施工管理要領については新たに材料・施工・品質管理について規定しています。



プレキャストPC床版最小厚さを220mm標準に規定

 縦桁を有する橋梁の半断面床版取替工法を追加

 ――次に床版取替え工法について

 広瀬 NEXCO3社で特定更新事業が始まり、多くの鋼橋でRC床版をプレキャストPC床版に取替える工事が計画および実行されています。これをスムーズにすべくプレキャストPC床版の統一的な要求性能などを追記しました。

  具体的には、取替える床版の最少厚さについて220mmを標準にしました(編注:直橋における床版支間3.6m以下それを超える場合は別途検討)。また、図面と実施工の乖離を防ぐため、計画路面高さを受注後の測量結果に基づいて決定することにしました。



プレキャストPC床版の架設(当サイト既掲載写真)

 加えて、半断面取替工法の検討フロー、照査項目を追加しています。

 ――半断面取替工法は何を追加しているのですか

 広瀬 半断面取替工法については、主桁間にある縦桁を利用もしくは増設して断面分割する工法も含めて、検討に必要な事項を追記しています。こうした縦桁を使った分割床版取替工法は実際にNEXCO以外で施工事例があるようです。その縦桁を用いた検討フローの追加や施工ステップを考慮して、既設床版や新設床版、縦桁など関連する部材の安定性について、照査する必要を明記しています。


半断面床版取替の施工事例(中国自動車道道谷第2橋、井手迫瑞樹撮影)


 ――縦桁を有しているNEXCO管理の橋というのは量はたくさんあるのですか

 広瀬 それほどはありませんが、古い供用年次の橋には少なからず見られます。そのためとりあえず標準的に入れたものです。やはり本当は(半断面床版取替時に)下から床版を支えられれば、それにこしたことはないわけですから。基本として押さえておくべきだろうという声に応えました。ただ、取替後はPC床版ですので構造的には縦桁が無くても構造的にもちます。個人的に床版取替後は、不要な部材として縦桁を撤去したほうが良いと考えています。 

 ――半断面床版取替工法の今次改定における具体的な記述はどんなものですか

 広瀬 橋軸直角方向の接合部の位置について既設構造形式や交通規制条件などをふくめた施工条件を考慮しなければいけないこと、同接合部は施工誤差を吸収できる構造にすることを原則とすること、床版との一体性を速やかに確保する観点から速硬性のある接合材料を用いることが望ましい――などです。また、縦桁がなくても、特に連続床版が片持ち床版に変化する部位は、安全性の照査を義務付けるとともに、安全性が確保できない場合には縦桁などの補強部材の増設の検討を求めています。先の施工ステップを考慮した部材の安定性とは、こうした施工時の補強部材が付いた場合のことを指しており、その照査を求めています。また縦桁を設置した床版は主桁と縦桁とに剛性差が生じますから、付加曲げモーメントの影響を考慮する必要があることも明記しています(簡易検討フローは下図)。


簡易検討フロー図


簡易施工手順


東名道日本平付近の高架橋の軸重を元に100年耐疲労性を求める

 プレキャストPC床版の接合構造

 ――また、橋軸部/橋軸直角部ともに接合構造は実験により耐疲労性が確認された構造とする、としていますが。ここでいう耐疲労性とどのような要求性能ですか。昨年は東海大府高架橋などの事例を踏まえて耐久性を確認する事例を記したのみであり、耐荷荷重ステップや耐荷回数などの詳細は決めていませんでしたが

 広瀬 現在の案として,現存する最大の軸重データである、平成17年度に1日交通量10万台を超える東名道日本平付近で調査した軸重を元に決めた載荷ステップ、載荷回数を使って、ひび割れの有無やたわみ状況、耐水性なども考慮して累積疲労させたときに100年耐疲労性を有する床版の接合構造を求めたいと思っています。本当は各PCファブでバラバラな耐疲労性を確認する試験方法をNEXCOとして明示したかったのですが、詰めなければいけない点があり、来年度に見送りました。

 ――試験は防水工を施工した状態で行っているのですか

 広瀬 床版そのものの耐久性を見るため、防水工を施工しない状態で、かつ水の影響も考慮して、一定回数乾燥状態で輪荷重載荷することを想定しています。

 ――つまり防水工が仮に破れても100年間持つ床版ということですね。相当レベルが高い床版ですね

 広瀬 もう一つ付け加えると平成17年の東名道日本平の交通量は今より多いですから、結構な強さになると思います。