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インタビュー詳細

道路橋床版の維持管理を分かりやすく解説

道路橋床版の維持管理マニュアル、防水ガイドラインを改訂

土木学会
鋼構造委員会
道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会
幹事長
((一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所)
谷倉 泉 氏

 土木学会鋼構造委員会道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会は、2016年10月に「道路橋床版の維持管理マニュアル2016」、「道路橋床版防水システムガイドライン2016」、「道路橋床版の橋面コンクリート舗装」を上梓した。名称に「2016」がついた2冊は、2012年に土木学会が上梓した同マニュアルおよびガイドラインをより分かりやすく改訂したものだ。この2冊の内容と、小規模自治体におけるオルタナティブとしてのコンクリート舗装の適用性について模索した成果「道路橋床版の橋面コンクリート舗装」について、同委員会の谷倉泉幹事長((一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所)に詳しく解説してもらった。(井手迫瑞樹)


 床版で見えない損傷が進行

 塩害やASR、凍害に起因した劣化

 ――2012年6月に出した道路橋床版の維持管理マニュアル(以降マニュアル)及び道路橋床版防水システムガイドライン(以降ガイドライン)の改訂について、まずマニュアルから述べてください

 谷倉幹事長 床版の維持管理の着目点は、これまで疲労による損傷が基本でした。しかし今回の改定ではそれに加えて塩害や凍害、ASRなど複合的な劣化に対する調査方法と対策をまとめています。その理由として、最近床版が押し抜けて陥没するという事故が起きているのですが、必ずしも疲労が進展してブロック状になって押し抜けるという従来の劣化進展メカニズムでは説明できない損傷が生じていることが挙げられます。塩害やASR、凍害による損傷は、必ずしも(従来の疲労による損傷で見られるように)貫通クラックが進展して押し抜けるという損傷ではありません。凍結防止剤を散布する場合に見受けられる塩害を例にしますと、床版表面から塩化物イオンが床版内部に浸入し、上側鉄筋にまで塩分が到達すると、鉄筋が腐食膨張し、鉄筋の周囲が砂利化して舗装にポットホールを生じさせるような損傷です。これは部分的に床版の版厚が減少し、最終的に輪荷重で押し抜けてしまう損傷に至ります。


ASRによる損傷



塩害による損傷


 特に北海道などでは、凍害とも複合しポットホールが数メートルおきに深さ約10㌢、幅30~50㌢近くあっても、床版下面に遊離石灰や貫通ひび割れがない状態が見られることもあります。こうした損傷は床版下面からは推定できませんが、舗装と砂利化部を除去してみると版厚は減っているわけです。


凍害による損傷

 凍害のみならずASRも同様にそうした砂利化を助長しています。例えばこれらの影響が見られる北陸などでは、交通荷重などに起因した貫通ひび割れなどの疲労損傷に加え、なおかつ砂利化も生じています。このように日本海沿岸や東北、北海道などの寒い地域では、疲労に加え塩害または凍害など複合的な損傷要因で劣化、損傷が顕在化しているのが最近の特徴です。こうした状況を受けて、国土交通省では従来のような床版下面から調査できるひび割れや遊離石灰だけでなく、舗装に生じているポットホールに着目して、その周辺の床版は注意して点検するような配慮がされるようになってきています。

 また、床版で砂利化が進んでいる場合は、集中工事などで舗装を剥ぎ取ると想定外の補修面積が明らかになることがあります。対応に追われた末、想定している交通規制時間内に対応することは難しい、あるいは予定していた補修材の量では足りない――といった理由で補修が困難になるケースもあるようです。そうならないように調査方法や準備すべき対策方法を事前に十分に検討し、道路管理計画を考えていくべきであるということも具体的に提案しています。


剥ぎ取ってみると予想外の損傷が進んでいるケースもある


地方のインハウスエンジニヤを対象に点検診断内容を作成

 全国15m以下の橋梁は56万橋、管理は地方自治体と市町村が主

 ――地方のインハウスエンンジニヤに対し配慮している点は

 谷倉 15m以下の中小橋の管理を行っている市町村のインハウスエンジニヤを対象に、次のような内容を解説しました。

 RC床版の損傷の特徴については前述したような輪荷重・複合劣化などの原因の解説、疲労の進行形態をわかりやすく詳述しています。さらに、5年に1回と義務付けられた橋梁点検についても、国交省の手法に基づいて詳述するとともに、写真や図表を取り入れてわかりやすく解説しています。さらに、それらの図表には従来見落としがちな複合劣化の例も含めて解説したことも特徴です。


非破壊検査や微破壊検査を紹介

 複合要因は通常の2倍以上の速さで劣化が進展

 ――具体的な調査方法は

 谷倉 基本的には、舗装のポットホールを目視確認することや床版下面からひび割れおよび、遊離石灰を調査する方法などですが、最近の様々な非破壊試験、微破壊試験も紹介しています。非破壊試験としては電磁波レーダー法や赤外線を用いた調査方法、微破壊検査方法としてはφ9mmの削孔を行って動画撮影できるSingle i工法などを示しています。また事前に舗装を剥いでサンプリングして調査することも推奨しています。結局、疲労とその他の原因が複合して損傷したと判断された場合には、劣化の進展が通常の2倍以上の速さで進みますので、防水層の施工も含めて早期の対策が重要である事を強調しています。過去の調査、対策事例を解説、紹介するだけでなく、最新の調査、解析手法の紹介も含めて、劣化過程をなるべく正しく把握して判定し、その結果に応じて、補修や補強を併用する方針でまとめています。


φ9mmの削孔を行って画像撮影


Single i 工法で撮影した内部画像