道路構造物ジャーナルNET

2017年新年インタビュー③

熊本市 落橋・通行止めに至った橋梁は19橋 一部でも損傷している橋梁は416橋に達する

熊本市都市建設局
土木部 道路整備課長

沼野 猛

公開日:2017.01.01

西環状道路の整備を進める
 二号トンネル1,500㍍超は現在掘削中

 ――次に新設路線の進捗について
 沼野 まず市の特徴を先にお話させていただきますと、熊本市は有明海に面し、一級河川の白川・緑川、二級河川の坪井川の3水系の下流部に形成された沖積平野である熊本平野の大部分を占め、また、阿蘇山と金峰山系との接合地帯にあり、数多くの山岳、丘陵、大地、平野等によって四方を囲まれています。平野というよりは盆地という地形が適切かもしれません。


2環状11放射道路

 熊本城の城下町を起源とした都市の形成を背景に、行政、学術研究機関などが数多く立地する行政都市・文教都市であり、市単独では74万人、都市圏人口としては100万人を擁する熊本都市圏の交流拠点都市として、九州を牽引する役割を担ってきました。
 地理的には九州中央に位置する地理的優位性やこれまで培った歴史・文化や都市集積という熊本の魅力を最大限に活かし、将来的には道州制の州都としての役割を果たせるような、熊本都市圏を構成する市町村や九州各都市圏と連携した都市づくりを進める必要がある、と考えています。
 具体的には2環状11放射道路の整備を目指しています。熊本では都市圏環状道路がうまく整備されておらず、市内は非常に渋滞が多く発生しています。この2環状がきちんと機能するようになりますと、都市内の渋滞というのは減ってくると思いますし、11の放射状道路が市と隣接する地域、ひいては九州各地とスムーズに結んでいく、コンパクト+ネットワークを実現できます。現在は、熊本市が主に事業を進めていますが、国の方にも事業の分担をお願いしており、連携しながら道路ネットワークを作っていきたいと思っています。
 環状道路と定義されている道路の一部は、市の東側にある国道57号熊本東バイパスと国道3号熊本北バイパスです。こちらは国が重点的に整備しており、ほぼ出来上がっています。一方、西側の環状線はまだ繋がっておらず、熊本市が熊本西環状道路事業ということで整備を進めています。
 ――熊本西環状道路の概要は
 沼野 国道3号植木バイパスと繋がる北は下硯川IC~南は砂原(県道51号タッチ部)までの12㌔を繋ぐ道路です。現在は北の国道3号とのタッチ部から花園IC間4㌔について花園工区として工事を進めており、予定では今年度末に供用予定です。


西環状道路事業位置

 さらに花園ICから南、池上IC(仮称)までの延長約5㌔区間は、池上工区として平成30年代前半の供用を目指して整備を進めています。さらに南の池上IC(仮称)~砂原IC(仮称)間約3㌔の砂原工区は調査中区間で、事業は未着手です。当面、池上ICまで繋がると、熊本駅までほぼ直結で結ばれることになり、地元では大きな期待をされています。他県から観光やビジネスなどで来られた方々から、熊本は渋滞が非常に多いと良く言われます。実際に熊本の道路は中心部に入っていく経路選択の余地がありません。現在自動車専用道路としては、東側に九州縦貫道が中心市街地を避けるように走っていますが、インターチェンジが最寄りでも熊本の中心まで約10㌔離れており、その間には一般道しかありません。加えて市の東側は宅地化が進展しており、交通混雑が激しい状況です。そこに生活交通や外部からの交通が混在して入ってくるため、国道57号熊本東バイパスを国の方に整備していただいてはいますが、それでもパンク気味であり、(東側の)環状道路としても機能をかなり失い気味です。


工区ごとの概要図

 西環状道路を作ることで、例えば九州縦貫道であれば、植木ICで降りて国道3号を南に下る、あるいは整備中(一部、暫定2車線供用している)の植木バイパスを活用して西環状の方に入ることで熊本の中心市街地に入ることができ、市全体の交通渋滞の緩和に寄与できると考えています。
 ――確かに今回の地震の時も国道3号はとても渋滞していましたね
 沼野 市北部の国道3号は、片側1車線の2車線道路で、非常に脆弱です。通常でも渋滞が多く、今回は九州縦貫道が通行止めになったことで、北部地域に大きな渋滞を引き起こしました。国道3号の冗長性確保という意味でもこの西環状道路を早く繋いでいきたいと考えています。この先には、さらに西環状道路と九州縦貫道を直接繋ぐ道路も調査中です。
 ――具体的には
 沼野 熊本環状連絡道路です。下硯川ICから九州縦貫道を繋ぐ約3㌔の事業です。これが繋がるとさらに市の交通渋滞の緩和や災害時の冗長性確保の効果が大きくなります。

最長は2号トンネル1,563㍍
 花園高架2号橋の上部工を施工へ

 ――建設中の主要の構造物は
 沼野 池上工区は工事が本格化していますが谷尾崎高架橋(509m、PC5径間連続ラーメン箱桁)が工区内最長で、現在詳細設計を進めています。トンネル最長は2号トンネル(NATM,1,563㍍)で、29年度内の完成を予定しています。1号トンネル(NATM、872㍍)は設計を完了しており今後工事発注を行って参ります。橋梁では花園高架2号橋(315㍍、鋼6径間連続非合成鈑桁)、島崎高架橋(70㍍、PC3径間連続中空床版桁)上部工の入札手続き中です。


西環状道路で建設中の構造物

島崎高架橋および花園2号橋の現況写真および諸元

 ――軟弱地盤等、橋梁基礎やトンネル掘削上の課題はありますか
 沼野 山岳道路なので軟弱地盤ということはありません。トンネルも2号トンネルを現在掘っていますが、土も比較的良く、順調に施工しています。
 ――ほか今後、市が独自で進める道路事業はありますか
 沼野 市とNEXCO西日本さんと両方で行っている北熊本スマートICがあります。平成30年度末に完成予定です。
 ――市とNEXCOはどのように事業分担していますか
 沼野 本線から料金所までをNEXCO、料金所から先のアクセス道路を市が分担しています。構造物は一部カルバートがあるだけであとは盛土です。

龍神橋など3橋を架け替え

 ――橋梁の架け替え事業は
 沼野 今年度は平成24年7月の九州北部豪雨で被災した龍神橋、吉原橋、明午橋の架け替えを行っています。


架け替え橋の位置/吉原橋

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