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インタビュー詳細

2017年新年インタビュー③

熊本市 落橋・通行止めに至った橋梁は19橋 一部でも損傷している橋梁は416橋に達する

熊本市都市建設局
土木部 道路整備課長
沼野 猛 氏

 熊本市は、今回の熊本地震で大きな被害を受けた。道路構造物でも白川橋に象徴的に示されているように落橋・通行止めに至った橋梁が19橋、一部でも損傷した橋梁は416橋に上った。そうした地震からの復興をはじめとして、地震で露呈したリダンダンシーの不足を解消するための西環状道路の整備、地震に備えた耐震補強の進捗を早めるための施策などの話題について、熊本市都市建設局土木部の沼野猛道路整備課長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)


鋼製支承が損壊した白川橋

 職員は問い合わせ対応に追われる

 ――熊本地震ですが、非常に大変だったと思います。1回目の地震が前震だとは誰も思いませんし、本震が起きたのは夜の1時なので、点検や安全確認など非常に困ったと思います。熊本県は、2次災害の危険を鑑みて本格的な調査は夜が明けてから行いました。一方NEXCO西日本は、高速道路を担っていることから、地震直後から点検を始めたという話でした。どちらが良い悪いといった話ではありません。熊本県では、今までの経験だと、本震のあとの余震は弱くなるのが普通だが、今回本震だと思っていた強い地震がきたので、いつ点検をさせたら作業者の安全を確保できるのか、ちょっとわからない、今後を非常に考えなくてはいけない事態になっているという話をされていました。市は被災直後の一週間とかはどうでしたか。

 沼野課長 損傷を被った橋の中で象徴的な事例として白川橋があります。熊本駅に程近い白川を渡る、橋長150㍍程度の橋です。4月14日に前震発生時には、伸縮装置の段差が確認されています。これは数㌢程度の段差ですが、一旦通行止めをその日の夜のうちにかけ、翌日にアスファルトで段差をすりつけて一旦解放しています。そのあと本震が発生し、さらに段差が大きくなっているため、桁下から確認したところ、鋼製支承が損壊していたため、慌てて全面通行止めをかけました。


白川橋


白川橋の損傷


白川橋の点検


 発災直後の調査については路面調査がメインになっています。その後、やはり専門的な視点を入れるため、災害協定を結んでいるPC建協、建設コンサルタンツ協会、熊本県の測量設計・コンサルタンツ協会に依頼し、主要な橋梁はGWまで、それ以外については割と余裕を見て非常時点検を行いました。通行の可否、重量や車線規制の要不要を行いました。

 先ほど県さんが言われていた地震直後の夜間点検は、市ではできませんでした。というのも、(基礎自治体である熊本市はNEXCOや中間自治体である県と比較して)市民から距離が近く、問い合わせ対応に職員は追われます。また、詳細は昼間じゃないと見えないというのがあるので、実質夜は動くことができていませんでした。直後は市民から通報された案件への対応をやっていたぐらいです。実際に車を走らせて点検できたのは翌朝です。さらに構造物の詳細点検は後々協定業者にお願いをして、主要な橋梁から先に見ていただきました。

 ――地震時の対応について改善すべき点はありますか

 沼野 協定を結んでいる業者はありましたが、結んでいない業者もありまして、そういう協定を結んでいないところについては事前に結ぶ必要があると今回痛切に感じました。


広範囲な協定締結の必要性を痛感

 地震後にPC建協、建コン協と災害協定を締結

 ――それはどこでしょうか。PC建協などでしょうか

 沼野 PC建協もそうですし、コンサルタント協会も熊本県の測量設計・コンサルタンツ協会とは結んでいますが、全国規模の建設コンサルタンツ協会とは結んでいませんでしたので、締結する必要があるということです。そのため、地震対応が少し落ち着いてから協定を結びました。いずれにしても全ての構造物を職員のみで早期に点検することはできないので、協定を結んでいる団体に積極的に支援のお願いをしていくことが大切であることが、今回の地震の中でよくわかりました。震災直後は、市職員は全然動けなくなります。極端な話、技術者であっても避難所に派遣されるなど、人がどんどん抜かれていきました。協力会社・団体と日頃から災害時のことを想定しておくことが重要です。

 ――具体的な地震による構造物の被害をもう少し詳しく

 沼野 主要橋梁に限って申しますと、落橋・通行止めに至る損傷が19橋、もしくは使用はできるが損傷をしている橋梁が416橋です。うち緊急輸送道路で落橋・通行止めに到った橋梁が先ほど紹介した白川橋です。



神園橋は架け直し

 日向2号歩道橋は架け替えの有無も含め検討

 ――神園橋はどういう状況ですか

 沼野 九州縦貫道を跨ぐロッキング橋脚を有する橋です。県の府領第一橋は落橋しましたが、神園橋については、橋脚が傾いたものの、桁は辛うじて落橋を免れました。ただし危険な状況だということで、NEXCO西日本さんで撤去していただきました。

 ――神園橋は架け直すのですか

 沼野 架け直す方向で進めています。

 ――市の橋で1橋ロッキング橋脚じゃないもので倒れたものはありませんでしたか

 沼野 落橋した橋はありませんでしたが、神園橋に加えて日向2号歩道橋(九州道の跨道橋)を撤去しました。

 ――日向2号歩道橋は落橋ではなく、非常に大きなせん断ひび割れが出ていましたが、直せば使えた可能性もあるということも関係者から聞きました、やはり危険だということですか

 沼野 斜πラーメンなので、橋全体として支える際に梁部材がこれだけ損傷しているという状況では撤去せざるをえなかったというのがNEXCOさんの判断です。あの状況ではゆっくりと判断する時間もありませんでした。それにGWまで交通開放するという至上命題があり、それまでにきちんと直すことは非常に難しく、壊すしか選択肢がなかったというのが実情です。

 ――日向2号歩道橋も架け替えるのですか

 沼野 真横に架かる日向2号橋にも歩道部があるので、架け替えの有無も含め検討しています。

 ――確か江津湖付近に架かる橋も結構段差ができたりしていましたね

 沼野 やはり震源に近く、かつ地盤が比較的弱い、秋津地区などでは橋台背面の段差等、市東部や南部地区が非常に多かったですね。落橋などの致命的損傷が無かったのは3プロなどの耐震補強を進めてきた甲斐があっかどうかは分かりませんが。

 ――しっかりと耐震補強をしていたからだと思います。ただし、一方で段差により通行できない橋梁が多かったように思えます。本復旧時に踏み掛け板や延長床版を配置するようなことはしないのか、と熊本県にも厳しいが現行制度では難しい、と言われていました

 沼野 確かに災害復旧事業では難しいですね。

 ――ただ、このままだと次回も同じことが起きるのではないでしょうか。交通を止めてまで踏み掛け板を設置する判断は非常に難しいと思いますが、熊本市の場合だとすでに壊れているものを通行を止めた状態で本復旧し、その時に本復旧だけではなく、地盤沈下が起きてもガクンと下がらずスロープ状になることで救急車なども通れるようになる段差抑止工を設置することは有意義だと思うのですが

 沼野 そうですね、実際に災害復旧事業では対象とならない工種に対して、路線ごとにはなりますがそういった踏み掛け板を設置するというのは大変やりたいところではあります。しかし、災害復旧事業以上のことをやろうと思うと、当然交付金か自主財源しかありません。交付金では突発的な案件への対応は困難ですし、自主財源はこの災害でほとんど失っています。そこは国でしかるべき基準や制度を作っていただければ、その制度に乗っかることはできますが、その制度がない中、単体でやるというのはなかなか難しいです。


落橋・通行止めに至る損傷があった橋梁である上沼山津橋(一般県道小池竜田線)


落橋・通行止めに至る損傷があった橋梁である平田高架橋(市道蓮台寺町第13号線)


使用は出来るが、損傷した橋梁である竜田跨線橋(一般県道熊本菊陽線)


使用は出来るが、損傷した橋梁である蓮台寺橋(市道蓮台寺町第13号線)


使用は出来るが、損傷した橋梁である火の君橋(一般国道266号)


使用は出来るが、損傷した橋梁である弓削立体橋(一般県道住吉熊本線)