道路構造物ジャーナルNET

来年度は15~20万平方㍍への適用拡大を目指す

山一化学工業「バイオハクリX-WB」がNETIS登録

山一化学工業株式会社
代表取締役社長

関谷 憲弘

公開日:2016.10.14

 山一化学工業の水系塗膜剥離剤「バイオハクリX-WB」がこのほどNETIS登録を完了した。発売開始以来、約10万平方㍍の実績を有するが、NETIS登録を契機にさらに国土交通省案件への拡大をも目指しており、来年度は15~20万平方㍍への適用拡大を目指す。製品の独自性、山一化学工業として鋼構造物塗膜剥離事業への意気込みや位置付けをどのように考えているのか関谷憲弘社長に聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――まず「バイオハクリX-WB」の内容から改めて説明をお願いします
 関谷社長 当社の「バイオハクリX –WB」は、鋼道路橋を中心とする鋼構造物の既存塗膜剥離剤を簡易かつ安全に施工できる環境配慮型鋼構造物用水系塗膜剥離剤です。事前に既存塗膜構成、塗膜厚を確認した後、適性量をエアレス塗付機(推奨)で塗付し、塗付後約24時間程度で有効成分が多層塗膜の深部まで浸透後、塗膜は軟化膨潤状態となります。軟化湿潤状態を確認した後、手工具(刃付スクレーパーなど)で剥離することが可能です。


バイオハクリX –WBの施工状況(NEXCO東日本 東北道・綱木川橋)

綺麗に剥離された状況(同)

 塗膜を湿潤シート状態で剥離・除去回収できるため、有害物質含有塗膜(PCB・鉛・タールなど)の拡散や飛散を抑制できます。塗膜剥離作業後、塗装実施前に鋼板面の凹部に残存する塗膜の除去、発錆部の除錆のため(ブラスト処理やディスクサンダー)を実施する必要があります。
 鋼道路橋の塗り替えにおいて、既存塗膜を除去し、重防食塗装系へ塗装仕様を変更する場合、素地調整程度2種以上が必要とされます。従来はブラスト工法(素地調整程度1種)および電動工具処理(素地調整程度2種)により、既存塗膜を除去するケースが専らでしたが、塗膜に含有するPCBや鉛、クロムなどの有害物質の拡散や飛散、作業時の騒音発生、作業の非効率などの問題点が生じます。また、鉛等有害物に含有する塗料のはく離やかき落とし作業を行う場合、厚生労働省「鉛中道予防規則等関係法令」に従い、必ず湿潤化で作業を行う必要があります。バイオハクリX-WBはそうした同法令の「湿潤化」に準拠しており、加えてバイオハクリⅩ-WBは、従来の塗膜剥離剤に多く採用されている塩素系有機溶剤「ジクロロメタン」を使用していないことをはじめ、人体への影響や環境負荷の大きい規制対象物資を使用しておらず、PRTR法、REACH規制、高懸念物質(SVHC)に該当しないなど製品単体での安全性も高く消防法非該当であることが特徴です。


バイオハクリX-WB商品荷姿

 ――会社としては塗膜剥離事業をどのように位置付けていますか
 関谷 私は社長に就任して2年目ですが、就任時の3年計画の注力すべき事業として、鋼構造物の既存塗膜剥離剤事業を位置付けています。現在は売上高こそ5%程度ですが、利益は総額の1割に達しており、非常にコストパフォーマンスの高い事業に成長しています。ある意味、性能が良く危険性が少ない水系塗膜剥離剤を求めるユーザーニーズに上手く乗れたのではないでしょうか。昨年度は適用面積換算で10万平方㍍強でしたが、今年度はその1.5~2.0倍を目指していきたいと考えています。
 ――現状、需要先の割合はどのようになっていますか
 関谷 県や市町村など自治体が6割、高速道路会社が2割弱、国土交通省が2割強という状況でした。主な案件としては東北道の綱木川橋(NEXCO東日本)、浜松市の浜名湖大橋、北陸道の日野川橋(NEXCO中日本)などがあります。
 先ごろNETIS登録が完了(KT-160043-A)したこともあり、今後は国土交通省案件にも積極的に営業していきます。効果は既に出ており、四国地方整備局徳島河川国道事務所の宍喰大橋で2,460平方㍍、同事務所の下名第一橋で1,300平方㍍それぞれ適用されています。
 ――他社にないメリットは
 関谷 1つは当社が製販一体であるということです。製造は全て自社生産であり、営業も全て自社で行っています。製造は自社生産であり、在庫も適正量抱えているため、受注後生産による時間ロスが生じません。また、先日には工場の拡張により増産も可能になっており量への対応は万全です。営業は元大手塗料メーカーや中堅塗装会社で長く鋼橋塗替えに携わってきたその道のプロが、技術窓口や指導を兼ねながら行っており、その場でフレキシブルな対応ができます。また、現場で生じた課題は顧客や営業を通じて報告されるようになっており、そうした情報を今後の技術資料や研究開発に反映することで、より品質の高い剥離剤の供給につなげていくことができるのも当社の強みと言えます。


那須工場で自社生産している

 そうした努力もあってか、リピーターも着実に増加しています。また、既存塗膜の調査も積極的に請け負っており、その際には合わせてバイオハクリX-WBが既存塗膜の剥離と相性が良いか試験することも提案しています。
 ――設計・施工要領書などの作成は行っていますか
 関谷 施工要領書を作成しています。その際にはバイオハクリX-WB工法の適用適否などや塗付量も明確に伝えており、性能限界はきちんと分かるようにしています。また、現場では塗装会社も施工チェックシートを作成しており、そうしたシートの精査ももちろん相談に乗っています。明らかに良いものは、当社の施工要領書にも新たに反映させており、より安全で現場ニーズに合った要領書になるよう日々見直しを図っています。
 ――出口戦略はどのように考えていますか
 関谷 当社は東京都内の橋などでも剥離後の塗膜廃棄物を施設に持ち込み適正な温度燃焼処理するようなことを行っています。環境対策を考えれば、基本的には発注者や元請のご意向かと思いますが、当社はクレハ環境などと連携して鉛やPCBを無害化を実現しております。いずれにせよ情報交換を幅広く行い、ユーザーニーズに合った対応ができるようにしたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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