道路構造物ジャーナルNET

トンネル・橋梁など構造物多し

高知県 四国8の字ルートを補完する道路を整備

高知県土木部
道路課長

森田 徹雄

公開日:2016.06.01

 高知県は、県土の北側を四国山地があり、県土の84%が森林で占められるなど、山地部が多くを占め、平野部が少ない地形となっている。一方でを仁淀川や四万十川、物部川等のなどの大河が急勾配で太平洋にそそぎこんでいる。そうしたことからトンネルや橋梁などの構造物が必要となるなど、他の都道府県に比べて工事費は割高となる傾向であり、二次改良率も50%を下回る数値となっている。そうした新設上の課題や南海トラフ地震対策、構造物の維持管理上の取り組みなどについて土木部道路課長の森田徹雄氏に取材した記事をまとめた。(井手迫瑞樹)

県土の84%が森林
 改良率は50%を下回る

 ――県内の地勢的特徴と道路網の現状から
 森田課長 本県は四国の南に位置し、東西に海岸線が714㌔と弓なりの形状を有し、県土の84%が森林で占められるなど、山地部が多くを占め、平地部が少ない地形となっています。北側には四国山地がそびえ、瓶ヶ森から三嶺等の1,500~1,900㍍級の急峻な山岳が連なっています。その四国山地から東部に位置する室戸岬方面では、河岸段丘が発達し、山地が海岸線に直接迫る地形を有します。西部に位置する幡多方面では、概ね700~1,000㍍程度の典型的な地塊山地となっています。
 これらの山地から仁淀ブルーやキセキの清流として知られる仁淀川や、最後の清流として知名度が高い四万十川、農業用水として重要な取水源である物部川などの一級河川が急勾配で太平洋に注ぎ込んでいます。
 地質的な特徴は、ほぼ東西に走る御荷鉾構造線と仏像構造線の2つにより分断され、北側から三波川帯、中央部に秩父累帯および南側に四万十帯とに分かれています。特に四万十帯が本県の約6割を占め、その地質は、他の地質帯と比べて単調な砂岩や泥岩ですが、御荷鉾構造線を中心とした両側では地滑りが集中しています。


四万十帯と秩父累帯

 さて、道路網の現状ですが、四国8の字ネットワークを構成する高規格道路に加えて、海岸線を東西に走る国道55号、56号などの4本の直轄国道と、四国山地を縦貫する国道439号など10本の県管理国道を幹線道路とし、それらを補完する189本の県道と26,429本の市町村道で構成されています。
 平成27年4月1日現在の状況は、一般国道が総延長1,092㌔、県道が総延長2,117㌔、うち県管理道路は199路線で総延長2,749㌔となっています。

1.5車線的道路整備を進める

 二次改良率は48.4%と全国的にみても非常に低い値となっています。本県は、現道が急峻な地形を縫うように走っており、工事費は平地部と比べて多くを必要とするためです。そのため、2車線整備にこだわらず、2車線改良、1車線改良、突角・線形の是正および退避所の設置などを効果的に組み合わせて整備する「1.5車線的道路整備」を進めています。これに積極的に取り組むことで、大幅なコスト縮減と整備効果の早期発現に繋げています。

北川道路 構造物比率は7割弱
 195号BPは大栃橋を鋼ニールセンローゼに架替え

 ――進捗中の各道路事業の目的と概要をお答えください
 森田 まず地域高規格道路から申し上げますと、阿南安芸自動車道の事業名「北川道路」(事業延長13㌔)があります。阿南安芸自動車道は、四国横断自動車道と直轄整備中の高知東部自動車道を連絡し、四国8の字ネットワークを構成する道路の一部となるもので、高知県では国道493号に沿って奈半利町~東洋町間を整備しています。北川道路の西側に位置する北川奈半利道路は奈半利町~柏木IC間(北川村)5㌔が全線供用済みです。
 北川道路では、まず柏木ICに接続する2-2工区(延長約4㌔)の整備を進めています。構造物比率は69.1%に達しており、その内訳はトンネルが2本(北川1号トンネル延長2,237㍍、同2号トンネル269㍍)、橋梁が2本(柏木1号橋 橋長105.9㍍、同2号橋 橋長152㍍)となっています。いずれも用地買収および設計委託中です。事業進捗率は5%程度でありこれからの事業と言えます。工事としてはトンネル取付部の上流側で一部施工しているぐらいです。
 次に国道195号では、高知市~香美市内の3工区延長約16㌔の整備を進めています。構造物比率は10.7%で、今後整備をする主な構造物としては旧土佐山田町の市街地を避けて建設するバイパス部におけるトンネルの新設と大栃橋の架け替え(橋長201㍍)があります。同橋は永瀬ダムを渡る箇所に架けている老朽化が進み、幅員狭小な現橋(鋼トラス橋)を新たに鋼中路式ニールセンローゼ橋に架け替えるものです。現在は下部工を施工中で、上部工の発注は平成29年度以降になる予定です。3工区全体の事業進捗率は72%に達しております。


大栃橋の現況

架替橋の側面図と平面図

439号 杓子峠にトンネルを計画

 ――国道439号の四万十町~四万十市境に事業中の改良区間は
 森田 国道439号は高知県の徳島県境~四万十市(旧中村市)に至る中山間地域を横断する背骨ともいえる重要な道路です。しかし、幅員狭小や線形不良、豪雨による事前通行規制区間などがあり、それらの解消を図るとともに、県内各国道8路線を連結し、県全体のネットワーク強化など幹線道路網の形成を目的として8工区に分けて事業を進めている総延長29.3㌔の事業です。構造物比率は14.9%で、既に事業進捗率は85%に達しています。
 主要構造物は杓子峠を貫く杓子トンネル(2,430㍍)がありますが、設計などは未着手です。

441号口屋内BP 2㌔を超える長大トンネルを計画
 494号佐川吾桑BP 橋梁2橋を施工中

 ――国道441号関連は
 森田 幅員狭小や線形不良、豪雨による事前通行規制区間などがあり、その解消を図るとともに愛媛県南予地域と四万十川流域および土佐湾西部を相互に結ぶ幹線道路網の形成を目的とする事業です。
 順次改良を進めており、口屋内BP(約3㌔)と中半BPの事業を残すのみとなっています。現在は口屋内BP事業の整備を主に進めており、構造物比率は実に77%に達します。口屋内トンネルの延長は2315㍍であり、坑口付近を用地買収中で、工事着手は未定です。事業進捗率は4%程度です。
 ――国道494号関連は
 森田 幅員狭小及び線形不良を解消するとともに、瀬戸内側からの一般国道33号と高知自動車道の須崎東ICへのアクセス強化を目指して幹線道路網の形成を目的とする道路事業です。現在は佐川吾桑バイパスとして須崎市・佐川両町境部約5.9㌔区間の整備を進めています。構造物比率は26%です。今後は橋梁を2本(120㍍、40㍍)とトンネルを2本(水口トンネル290㍍、野滝トンネル285㍍)予定しています。
 ――現在設計中及び設計済みの橋梁およびトンネルは
 森田 設計中の橋梁は柏木1号橋、同2号橋(1号橋:鋼少数鈑桁、2号橋:鋼細幅箱桁橋、基礎はいずれもニューマチックケーソンなど)、国道494号佐川~吾桑BPの第二川ノ内組橋(116.5㍍、PCコンポ橋、深礎杭基礎)などです。設計済みで未着手の橋梁はありません。同様にトンネルは設計中が北川第1、第2トンネル、設計済みが主要地方道安田東洋線の明神口トンネル(679㍍)、主要地方道窪川船戸線の岩土トンネル(519.6㍍)などです。

鯛の川橋上部工を施工中
 新野越トンネルは薄い土被りに配慮

 ――同様に施工中の橋梁およびトンネルは
 森田 先ほど触れたもの以外では、国道494号の川ノ内組橋(40㍍、鋼単純合成鈑桁)がA2橋台を施工中です。同じく国道494号で鯛の川橋の上部工(119.5㍍、PC2径間連続Tラーメン箱桁橋)を施工中です。また、国道321号山路~実崎拡幅事業において、山路橋(116.7㍍、鋼2径間連続非合成箱桁橋)のP1橋脚を施工中です。橋台については施工を完了しています。



鯛の川橋の平面図と側面図

 トンネルは国道197号野越BP事業で新野越トンネル(796㍍)、国道439号木屋ヶ内バイパス第二工区で木屋ヶ内トンネル(271㍍)をそれぞれ施工中です。新野越トンネルは現道から土被り厚が約20㍍しかない区間があり、現道交通を確保した上での掘進が必要です。そのため土被り厚が薄い区間においては補助工法を併用して、現道や家屋に配慮しながら施工しています。現道の野越トンネルについては大型車のすれ違いが困難であるため、重要度の高い事業と考えています。

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